易経64卦は、以下の表に示すように、八卦を上下二つ組み合わせ、すなわち、8×8=64通りの人生の局面を表してます。
上の卦を上卦(外卦)、下の卦を下卦(内卦)といい、上下組み合わせたものを大成卦(本卦)といいます。表に64卦の卦象と卦名を示しています。
1.乾為天(けんいてん)
2.坤為地(こんいち)
3.水雷屯(すいらいちゅん)
4.山水蒙(さんすいもう)
5.水天需(すいてんじゅ)
6.天水訟(てんすいしょう)
7.地水師(ちすいし)
8.水地比(すいちひ)
9.風天小畜(ふうてんしょうちく)
10.天沢履(てんたくり)
11.地天泰(ちてんたい)
12.天地否(てんちひ)
13.天火同人(てんかどう じん)
14.火天大有(かてんたい ゆう)
15.地山謙(ちざんけん)
16.雷地予(らいちよ)
17.沢雷随(たくらいずい)
18.山風蠱(さんぷうこ)
19.地沢臨(ちたくりん)
20.風地観(ふうちかん)
21.火雷噬嗑(からいぜいごう)
22.山火賁(さんかひ)
23.山地剥(さんちはく)
24.地雷復(ちらいふく)
25.天雷无妄(てんらいむ もう)
26.山天大畜(さんてんたいちく)
27.山雷頤(さんらいい)
28.沢風大過(たくふうたいか)
29.坎為水(かんいすい)
30.離為火(りいか)
31.沢山咸(たくざんかん)
32.雷風恒 (らいふうこう)
33.天山遯(てんざんとん)
34.雷天大壮(らいてんた いそう)
35.火地晋(かちしん)
36.地火明夷(ちかめいい)
37.風火家人(ふうかかじん)
38.火沢睽(かたくけい)
39.水山蹇(すいざんけん)
40.雷水解(らいすいかい)
41.山沢損(さんたくそん)
42.風雷益(ふうらいえき)
43.沢天夬(たくてんか い)
44.天風姤(てんぷうこう)
45.沢地萃(たくちすい)
46.地風升(ちふうしょ う)
47.沢水困(たくすいこん)
48.水風井(すいふうせい)
49.沢火革(たくかかく)
50.火風鼎(かふうてい)
51.震為雷(しんいらい)
52.艮為山(ごんいざん)
53.風山漸(ふうざんぜん)
54.雷沢帰妹(らいたくきまい)
55.雷火豊(らいかほう)
56.火山旅(かざんりょ)
57.巽為風(そんいふう)
58.兌為沢(だいたく)
59.風水渙(ふうすいかん)
60.水沢節(すいたくせつ)
61.風沢中孚(ふうたくちゅうふ)
62.雷山小過(らいざんしょうか)
63.水火既済(すいかきせい)
64.火水未済(かすいびせい)
(卦辞)乾。元亨利貞。 (けんはおおいにとおる。ていによろし。)
乾為天は、上下の卦ともに天の組み合わせです。天(乾)は3つすべて陽(-)で、健全なもの、
堅くて動的なもの、お父さんのように高くて大きなものを表しています。勢いのある強い卦です。
仕事も一生懸命頑張っている非常に良い卦です。但し、勢い余ってやり過ぎることのないように、
周囲の意見をよく聞いて時期に応じた対応が大切です。初爻から上爻まで、龍の一生の物語で説明されています。
(爻辞)
初爻 潜龍勿用。(せんりゅうもちうるなかれ。)
まだまだ実力不足なので力を蓄える時です。
二爻 見龍在田。利見大人。(けんりゅうでんにあり。たいじんをみるによろし。)
少しは認められるようになってきたが、まだまだ経験不足なので、見識のある上司や先輩に相談して進めること。
三爻 君子終日乾乾。夕惕若。厲无咎。
(くんししゅうじつけんけん。ゆうべまでてきじゃくたれば、あやうけれどもとがなし。)
一日中仕事に励み、夕方まで低姿勢で頑張れば、危うい地位であるが問題はない。中間管理職の立場。
四爻 或躍在淵。无咎。(あるいはおどりてふちにあり。とがなし。)
龍が天に向かって飛び立とうとしている。問題はないが、慎重に行動すること。
五爻 飛龍在天。利見大人。(ひりゅうてんにあり。たいじんをみるによろし。)
龍が天高く昇った時で、非常に勢いのある時です。会社でいえば社長の地位。
優秀な部下の意見にも耳を傾けること。
上爻 亢龍有悔。(こうりゅうくいあり。)
昇りすぎた龍は後悔する。勢い余って進み過ぎると失敗する。
(卦辞) 坤元亨。利牝馬之貞。君子有攸往。先迷後得主。利西南得朋東北喪朋。安貞吉。
(こんはおおいにとおる。ひんばのていによろし。くんしゆくところあり。さきんずればまよい、
おくるればしゅをう。せいなんにともをえ、とうほくにともをうしなうによろし。ていにやすんずればきち。
坤為地は、上下の卦ともに地の組み合わせです。地(坤)は3つすべて陰(- -)で、
柔順で、静的なもの、お母さんのようにやさしいもの、そして、全てを受け入れる包容力
のある大地の姿を表しています。牝馬のようにおとなしく柔順であれば問題はない。
人の後からついていき、裏方や女房役に徹した方がうまくいくという卦です。
(爻辞)
初爻 履霜。堅氷至。(しもをふみてけんぴょうにいたる。)
薄い霜も思いもよらず厚い氷になる。初めは些細 なことでも、放っておけば大きな問題になる。
二爻 直方大。不習无不利。(ちょくほうだい。ならわずしてよろしからざるなし。)
実直で品行方正、包容力が大きければ、習わずとも誤ることはない。中正で、坤の中心となる爻。
三爻 含章可貞。或従王事。无成有終。
(しょうをふくむていにすべし。あるいはおうじにしたがえば、なすことなけれどもおわりあり。)
積極的に才能を発揮したい気持ちがあるが、包み隠す美徳があり、従順に従えば最終的には良い。
四爻 括嚢。无咎无誉。(のうをくくる。とがもなくほまれもなし。)
袋の口をくくるように、知恵を隠し、発言にも注意して慎ましくしていれば、無事に過ごせる。
五爻 黄裳元吉。(こうしょうげんきち。)
頭が低く、中庸柔順の徳が内に満ちて、おのずから徳が外に顕われている。大いに吉。
上爻 龍戦干野。其血玄黄。(りゅうやにたたかう。そのちげんこう。)
温厚柔順の心を忘れて上へ進みすぎ、互いに傷ついた姿です。嫁姑の争いにも見立てられます。
(卦辞) 屯。元亨利貞。勿用有攸往。利建侯。
(ちゅんはおおいにとおるていによろし。ゆくところあるにもちうるなかれ。こうをたつるによろし。)
水雷屯は、下卦が雷(震)、上卦が水(坎)の組み合わせです。雷は動くもの、長男を表し、
水は陥いる、中男を表しています。雷が水の下にあり、必死に芽を出そうとしてもがいている姿を表し、
今は時が悪いので、進まずに我慢しなければいけないという卦です。じっと待っていれば良くなります(亨)。
どうしてもやらなければいけない時は自ら手を下さずに人にやってもらうのが良い。厳しい卦です。
(爻辞)
初爻 磐桓。利居貞。利建侯。(ばんかんたりていにおるによろし。たてられてこうたるによろし。)
今は、実力があっても動かず、正道を守る時です。いずれは認められる時がくる。
二爻 屯如。邅如。乗馬斑如。匪寇婚媾。女子貞不字。十年乃字。
(ちゅんじょてんじょ。うまにのりてはんじょ。あだするにあらず。こんこうせんとす。
じょしていにしてじせず。じゅうねんにしてすなわちじす。)
今は我慢の時です。誘いがあっても動かず、じっと待つのが大切。
三爻 即鹿无虞。惟入于林中。君子幾不如舎。往吝。
(ろくにつきてぐなし。ただりんちゅうにいる。くんしほとんどすつるにしかず。ゆけばりん。)
鹿狩に行ったが、案内人がいないようなもので、これ以上進めば困難に陥る。やめておいた方がよい。
四爻 乗馬班如。求婚媾往吉。无不利。
(うまにのってはんじょ。こんこうをもとむゆけばきち。よろしからざるなし。)
協力して行えば上手くゆく。
五爻 屯其膏。小貞吉。大貞凶。(そのこうをちゅんす。しょうていはきち。だいていはきょう。)
立場が弱い時です。小さな事なら正しく行えば良いが、大きな仕事は手を出すべきではない。
上爻 乗馬班如。泣血漣如。(うまにのりてはんじょ。きゅうけつれんじょたり。)
どこからも助けの得られない孤立無援の時です。上爻なので、もう少し我慢していれば道は開けてきます。
(卦辞)蒙亨。匪我求童蒙。童蒙求我。初筮告。再三瀆。瀆則不告。利貞。
(もうはとおる。われどうもうをもとむるにあらず。どうもうわれをもとむ。
しょぜいはつぐ。さいさ んすればみだる。みだるればすなわちつげず。ていによろし。)
山水蒙は、下卦が水(坎)上卦が山(艮)の組み合わせです。水は陥いる、中男を表しています。
山はどっしりとして動かないもの、少男を表しています。山の下に泉水が湧き出るが、まだ、流れ行く
先も定まらない。蒙は、木を覆い尽くしているつる草のことで、朦朧として先がみえないことを表しています。
自ら指導者に教えを乞うて自己を高めることが大切です。教育の卦とも言われています。
(爻辞)
初爻 発蒙。利用刑人。用説桎梏。以往吝。
(もうをはっす。もってひとをけいするによろし。もってしっこくをとく。もってゆけばりん。)
無知蒙昧の人間には始めに刑罰を用いて厳しく対処すべきだが、過ちを改めれば寛容に見守る。
発は啓と同じで、「啓蒙」という言葉の語源といわれる。
二爻 包蒙吉。納婦吉。子克家。(もうをいるきち。ふをいるきち。こいえをよくす。)
蒙昧な者を包容して良く指導する。婦人もよく導き、縁談にも良い。子は親を支え家を繁栄させる。
三爻 勿用取女。見金夫不有躬。无攸利。
(じょをとるにもちうるなかれ。きんぷをみてみをゆうせず。よろしきところなし。)
縁談は避ける時。金持ちの男に目が眩んでついていくような女で、良い事はない。
四爻 困蒙吝。(もうにくるしむりん。)
上にも下にも助けてくれる指導者がなく苦しむ。自ら求めて教えを乞い、学習すべき時です。
五爻 童蒙吉。(どうもうきち。)
自ら求めて学ぼうとする素直な態度があるから良い。良い指導者に恵まれている。
上爻 撃蒙。不利為寇。利禦寇。(もうをうつ。あだをなすによろしからず。あだをふせぐによろし。)
無知の者を厳しく指導するのは良いが、恨み買わぬ程度の寛容さも必要である。
5.水天需(すいてんじゅ) 【英気を養って好機を待つ時】 晴れたり曇ったり
youtube動画「水天需」
(卦辞)需。有孚光亨。貞吉。利渉大川。
(じゅはまことありおおいにとおる。ていきち。たいせんをわたるによろし。)
水天需は、下卦が天(乾)、上卦が水(坎)の組み合わせです。天の上に水(険難)があり、
天の上に伸びようとする力も抑えられています。今は時期が悪いので待つべきだと示しています。
一方、水は雲となって遠からず雨となって降る。待てば必ず来る。時期がくれば実行して大丈夫。
今はその時に備えて英気を養い、力を蓄える時です。決して急いだり、慌てたりしてはいけません。
爻が進むにつれてそれぞれの段階で取るべき対応が示されています。飲食に関係深い卦でもある。
(爻辞)
初爻 需于郊。利用恒。无咎。(こうにまつ。つねをもちうるによろし。とがなし。)
険(水)難と遠く離れて待つ。変化を求めず、日常のことを続けていれば、問題はない。
二爻 需于沙。小有言。終吉。(しゃにまつ。すこしきことあり。ついにきち。)
水辺の砂地のような険難と少し離れた所で待つ。小言を言われることがあっても、最終的には吉。
三爻 需于泥。致寇至。(でいにまつ。あだのいたるをいたす。)
もう少し険難に近い水際の泥地のような不安定な場所で待つようなものだ。敵の進行を招こうとしている。
決して動いてはいけない。盲進は禁物。
四爻 需于血。出自穴。(ちにまつ。あなよりいず。)
すでに険(水)の中に踏み込んで血まみれになって待っている状態である。しかし、おとなしく待っていれば、
やがて穴から脱出できる。
五爻 需于酒食。貞吉。(しゅしょくにまつ。ていきち。)
酒食を楽しみながらゆったりと待つ。正道を守っていれば吉。間もなく、待望の渡し舟が到着します。
上爻 入于穴。有不速之客三人来。敬之終吉。
(あなにいる。まねかざるのきゃくさんにんきたるあり。これをけいすればついにきち。)
険難の穴にはまって、窮地に陥る。思いがけない客が来るが、誠意をもって対応すれば終には吉。
思わぬ援助が得られる。受身に徹すること。
(卦辞)訟有孚塞。惕中吉。終凶。利見大人。不利渉大川。
(しょうはまことありてふさがる。おそれてちゅうすればきち。おわればきょう。
たいじんをみるによろし。 たいせんをわたるによろしからず。)
天水訟は、下卦が水(坎)、上卦が天(乾)の組み合わせです。天の下に水があり、天は上に向かい、
水は下に向かい、上下相交わることのない対立の卦です。訴訟を表しています。
目上の人に相談して和解に向かうべきです。物事を始める時には、争い事が起こらないように、
最初によく計画し、慎重に考えてから実行しないと、例え訴訟に勝っても結局は損をすることになる。
(爻辞)
初爻 不永所事。小有事。終吉。(ことするところをながくせず。すこしきことあり。ついにきち。)
争い事は長引かせずに、早めに切り上げる。多少もめても最終的には吉。。
最初に、慎重に考えてから行動に移すことが肝要である。
二爻 不克訟。帰而逋。其邑人三百戸。无眚。
(うったえをよくせず。かえりてのがる。そのゆうじんさんびゃっこ。わざわいなし。)
訴えても、目上には勝てない。引き下がっていれば、わざわいは免れる。
三爻 食旧徳。貞厲終吉。或従王事无成。
(きゅうとくにはむ。ただしければあやうきもついにきち。あるいはおうじにしたがいなすことなし。)
従来の仕事に満足していれば、危ういけれども終には吉となる。大きな仕事に挑戦しても成功しない。
四爻 不克訟。復即命。渝安貞吉。
(うったえをよくせず。かえりてめいにつき。かえてていにやすんずればきち。)
訴えに勝てない。引き下がって、自分の地位わきまえて、目上の人に従い、心機一転、
自分の本来の仕事に戻れば吉。
五爻 訟元吉。(うったえげんきち。)
訴えて勝ち、大いに吉。占って、この卦爻がでれば、その人に理があれば、訴訟には勝つ。
上爻 或錫之鞶帯。終朝三褫之。(あるいはこれにはんたいをたまう。しゅうちょうにみたびこれをうばわる。)
天意に逆らって強引に訴訟に勝っても、衆人の信用を得られず、得たものも失う。
(卦辞)師。貞。丈人吉。无咎。(しはただし。じょうじんはきち。とがなし。)
地水師は、下卦が水(坎)、上卦が地(坤)の組み合わせです。師は、師団の師で、軍隊を表す。
地の下に水がある、昔、農民は平時は耕し、事あると兵として出動した。従って、地のように動かぬものの下に、
水(兵)が潜んでおり、戦争を意味します。器の大きい人、実力のあるリーダーに率いられるなら問題ない。
二爻が唯一の陽爻で、これが実力のあるリーダーに相当します。
(爻辞)
初爻 師出以律。否臧凶。(しいずるにりつをもってす。よきにあらざればきょう。)
出陣にあたっては、規律を守るのが第一である。規律が守られなければ凶。最初が肝心である。
二爻 在師中吉。无咎。王三錫命。(しちゅうにありきち。とがなし。おうみたびめいをたまう。)
実力ある指導者に恵まれているので、大丈夫。大きな成果が得られる。
三爻 師或輿尸。凶。(しあるいはしかばねをになう。きょう。)
無能な指導者では、戦いには負ける。凶。
四爻 師左次。无咎。(しさじす。とがなし。)
実力をわきまえて、退き、止まるので、大過はない。
五爻 田有禽。利執言。无咎。長子帥師。弟子輿屍。貞凶。
(かりにきんあり。しつげんによろし。とがなし。ちょうししをひきう。ていししかばねをになう。
ただしけれどもきょう。)
敵がやってきた。戦いの命令を下すがよい。ただし、有能な指導者に一任するべきである。他の無能なもの
に任せると失敗する。
上爻 大君有命。開国承家。小人勿用。(たいくんめいあり。くにをひらきいえをうく。しょうじんもちうるなかれ。)
戦い終わり、論功行賞の時。功績の大きいものには、責任ある地位につかせる。ただし、誠のない者を登用しては
いけない。
(卦辞)比。吉。原筮。元永貞无咎。不寧方来。後夫凶。
(ひはきち。ぜいにたずねげんえいていにしてとがなし。やすからざるものまさにきたる。こうふはきょう。)
水地比は、下卦が地(坤)、上卦が水(坎)の組み合わせです。比は人と親しむことです。 水の下に地があり、
水が下の地に向かってしみこんで、相親しむので、人と仲良くできる良い卦です。 ただし、時機を失しないように
しましょう。
(爻辞)
初爻 有孚比之无咎。有孚盈缶。終来有他吉。
(まことありてこれにひすとがなし。まことありてふにみつれば。ついにきたりてたのきちあり。)
人と親しむのに、真心で交われば良い。それが器に満ちるほどであれば、終には予想外の吉が得られる。
良い時です。
二爻 比之自内。貞吉。(これにひするうちよりす。ていにしてきち。)
あなたの方から真心をもって親しくすると、援助の得られる時です。良い時です。
三爻 比之匪人。(これにひするひとにあらず。)
親しくするのは良くない人ばかり。反省して、過ちを改めること。
四爻 外比之。貞吉。(ほかこれにひす。ていにしてきち。)
良くない人との交際を止めて、見識のある目上の人と親しくすれば良い結果となる。良い時です。
五爻 顯比。王用三驅失前禽。邑人不誡。吉。
(ひをあきらかにす。おうもってさんくしてぜんきんをうしなう。ゆうじんいましめず。きち。)
水地比の道を明らかにする。獲物を三方から追って前方だけ逃すように、寛容な心をもって親しめば、
皆、安心して慕ってくるので、吉。良い時です。
上爻 比之无首。凶。(これにひすしゅなし。きょう。)
孤立無援で、親しくする相手がいない。 始めを誤っているので終りも良くない。
悪友との関係を断って反省すべき時。
(卦辞)小畜。亨。密雲不雨。自我西郊。(しょうちくはとおる。みつうんあめふらず。わがせいこうよりす。)
風天小蓄は、下卦が天(乾)、上卦が風(巽)の組み合わせです。小蓄は、少し止まって渋滞していることです。
天の上に風があり、風は地上をあまねく動き、畜(とど)めても長く続かない。
まだ実力が十分蓄積されてないので、
機の熟するのを待てば、西の方から雨が降ってくるので亨(とお)る。
(爻辞)
初爻 復自道。何其咎。吉。(かえるみちよりす。なんぞそれとがあらん。きち。)
進もうとする心が強いが、途中で引き返す。正しい選択で問題はない。吉。現状維持に努めること。
二爻 牽復吉。(ひかれてかえるきち。)
友に引かれて帰る。吉。友(初爻)とともに進退し、自らの道を守る。人の意見に素直に従うこと。
三爻 輿説輹。夫妻反目。(よふくをとく。ふさいめをそばむ。)
車の車軸が外れて進めない。夫婦が反目し合い、家内を治めることができない。強引に進まないこと。
四爻 有孚。血去愓出。无咎。(まことあり。ちさりおそれいず。とがなし。)
誠を尽くして、上の人に頼れば、難しい課題も解決しうる。
五爻 有孚。攣如。富以其隣。(まことあり。れんじょ。とみそのとなりとともにす。)
誠を尽くして、隣人と協力しあう。富も独り占めしないこと。
上爻 既雨既処。尚徳載。婦貞厲。月幾望。君子征凶。
(すでにあめふりすでにとどまる。とくをたっとびのす。ふはただしけれどもあやうし。つきぼうにちかし。
くんしゆけばきょう。)
すでに雨が降り、目的を達成した。これに満足しないで、強引に進んではいけない。
(卦辞)履虎尾。不咥人。亨。(とらのおをふむ。ひとをくらわず。とおる。)
天沢履は、下卦が沢(兌)、上卦が天(乾)の組み合わせです。上卦の天は怖い父、剛いものを表し、
下卦の沢は、か弱い少女、あるいは和らげ悦ばすを表すので、虎の尾を踏むような危険はあるが、
人が喰われることはない、大丈夫。すなわち、危険な状況に置かれているが、礼儀正しく、目上の
人の意見を聞いて行っていけばなんとか切り抜けられる。ただ、この卦は、女子裸身の卦ともいわれ、
人間の体の部位でいえば、股にあたる3爻に、唯一の陰爻があり、1人の女が5人の男を相手にして
いる卦なので、異性問題には注意しましょう。
(爻辞)
初爻 素履。往无咎。(そり。ゆきてとがなし。)
最下位の陽爻、能力はあるが、地位は低く、素直に普段通り動けば、問題はない。
二爻 履道坦坦。幽人貞吉。(みちをふむたんたん。ゆうじんていにしてきち。)
隠者のごとく坦々と行っていれば良い。
三爻 眇能視、跛能履。履虎尾。咥人。凶。武人爲于大君。
(すがめよくみる。あしなえよくふむ。とらのおをふむ。ひとをくらう。きょう。ぶじんたいくんとなる。)
弱いくせに強がって虎の尻尾を履もうとするが、逆に噛みつかれる。身の程しらずで、武勇だけの武将が大君
となるべく反乱するようなものである。この爻は天沢履の中でも、人体の股に当たる三爻の陰(女性)が
男性(陽)に囲まれています。異性関係にはくれぐれも注意する必要があります。
四爻 履虎尾。愬愬終吉。(とらのおをふむ。さくさくたればついにきち。)
虎の尾を踏んで噛まれそうな危険な地位にいるが、柔順な態度をとって恐れ慎んでいれば、最終的には吉となる。
五爻 夬履。貞厲。(ふむことをさだむ。ただしけれどもあやうし。)
実力があるので決然として進もうとするが、自信過剰で危うさが伴うので、注意が必要である。
上爻 視履考祥。其旋元吉。(ふむことをみてしょうをかんがう。それめぐればげんきち。)
これまで進んできた道を反省し、常に正しい道に立ち返るように行えば吉。
(卦辞)泰。小往大来。吉亨。(たいはしょうゆきだいきたる。きちにしてとおる。)
地天泰は、下卦が天(乾)、上卦が地(坤)の組み合わせです。 天は上に向かおうとし、
地は下に向かい、天と地が交わって万物が生まれる。吉である。
ただし、何事もいずれは衰えるので、上下心を合わせて好調を維持するように努めること。
現状維持が良い。昔ながらの易者の看板にある卦象(左上)である。
(爻辞)
初爻 抜茅茹。以基彙。征吉。(ぼうをぬくにじょたり。そのたぐいをもってす。ゆけばきち。)
茅を抜くと根が連なって抜けるように、仲間と力を合わせて進めば吉。チームワークを大事。
二爻 包荒用馮河。不遐遺。朋亡得尚于中行。
(こうをいるひょうかをもちう。かいせず。ともほろぶればちゅうこうにあうことをう。)
寛容な心を持ち、細かい気配りと公平な態度であれば、思い切って進んで良い。
三爻 无平不陂。无往不復。艱貞无咎。勿恤。基孚于食有福。
(たいらにしてかたむかざるなく。ゆきてかえらざるなし。かんていなればとがなし。
うれうるなかれ。それまことならばしょくにおいてさいわいあり。)
安泰な時はいつまでも続かない。困難な時でも正しく行動していれば問題はない。真心で行えば幸いがある。
四爻 翩々不富。以基鄰。不戒以孚。
(へんへんとまず。そのとなりをもってす。いましめずしてもってまことあり。)
自分は富もうとせず、隣人と協力し合 う。謙虚な気持ちで下に接する真心だ大切である。
五爻 帝乙帰妹。以祉元吉。(ていおつまいをとつぐ。もってさいわいありげんきち。)
優秀な部下に妹を嫁がせるように、部下など有能な人材の力を借りて、目的が達成できる時。
上爻 城復于隍。勿用師。自邑告命。貞吝。
(しろからぼりにかえる。しをもちいるなかれ。ゆうよりめいをつぐ。ただしけれどもりん。)
城が崩れてしまい、もはや戦うことはできない。命令系統が乱れて、部下にも信頼されず、
正しくしていても危うい。地天泰の時が終わり天地否に移ろうとしている。
(卦辞)否。之匪人。不利君子貞。大往小来。
(ひはこれひとにあらず。くんしのていによろしからず。だいゆきしょうきたる。)
天地比は、下卦が地(坤)、上卦が天(乾)の組み合わせです。地天泰とは逆に、上卦の天は上に向かおうとし、
下卦の地は下に向かい、交わることがないので、正しく事を行っていても上手く行かない。世はまさに暗黒時代。
「能ある鷹」よろしく能力を隠して、控えめにして、時が至るのを待つ。
(爻辞)
初爻 抜茅茹。以基彙。貞吉。亨。(ぼうをぬくにじょたり。そのたぐいをもってす。ていきつ。とおる。)
仲間と協力して行動して、貞正にしていれば好転する。初六は九四と応じており、まだ最初の爻なので、
悪友の誘惑に乗らないで、心を入れかえれば道は開ける。
二爻 包承。小人吉。大人否亨。(ほうしょうす。しょうじんはきち。たいじんはひにしてとおる。)
六二は、陰爻陰位で中正なので、小人は九五の目上のいうことを受け入れれば吉。
大人は、不運の時を泰然と受け止めて待っていれば、時が至れば亨る。
三爻 包羞。(はじをつつむ。)
悪事を企んでいるが、心中恥じて、まだ実行に踏み切れていない。
四爻 有命无咎。疇離祉。(めいありとがなし。たぐいさいわいにつく。)
目上の命令に従って、同志と協力して行えばい互いに幸せを得る。
五爻 休否。大人吉。基亡基亡。繋于苞桑。
(ひをきゅうす。たいじんはきち。それほろびんそれほろびんとす。ほうそうにつなぐ。)
天地否の状態が止んだ。大人であれば吉であるが、重々警戒しながら安全を保たなければならない。
上爻 傾否。先否後喜。(ひをかたむく。さきにはふさがりのちにはよろこぶ。)
否の時が傾き終わりに近づき、先には、塞がり(否)を覆して喜ぶ時が来る。
(卦辞)同人。于野。亨。利渉大川。利君子貞。
(どうじんやにおいてす。とおる。たいせんをわたるによろし。くんしのていによろし。)
天火同人は、下卦が火(離)、上卦が天(乾)の組合わせです。天も火もともに上に向かう、
同じ志を持った者(同人)が団結して進めば上手くいく。非常に良い卦です。
共同事業などには良い時です。ただし、公明正大であること。
(爻辞)
初爻 同人于門。无咎。(どうじんもんにおいてす。とがなし。)
門を出て広く公平に人と交際する。問題はない。
二爻 同人于宗。吝。(どうじんそうにおいてす。りん。)
身内や親族など限られた人とばかりと交際するようでは良いとは言えない。
三爻 伏戎于莽。升其高陵。三歳不興。(じゅうをもうにふくす。そのこうりょうにのぼる。さんさいおこらず。)
兵を挙げようと叢に伏せても相手が強く立ち上がれない。
四爻 乘其墉。弗克攻。吉。(そのかきにのる。せむるあたわず。きち。)
相手は守りが固く、とても攻めきれそうにない。見切りをつけて手を引いた方が得策。
五爻 同人先号咷而後笑。大師克相遇。(どうじんさきにはごうとうしてのちにわらう。だいしかちてあいあう。)
最初は妨害に会い望みが叶わないが、大軍をもって戦に勝ちやっと望みを達成し、最後に笑う。大変良い時です。
上爻 同人于郊。无悔。(どうじんこうにおいてす。くいなし。)
志を同じくする仲間がいない。自ら退いて離れた位置にいるのが無難。仲間はずれになりやすい。
(卦辞)大有。元亨。(たいゆうはおおいにとおる。)
火天大有は、下卦が天(乾)、上卦が火(離)の組み合わせです。天の上に太陽が輝いている。
実力もあるあなたの上に太陽が輝いており、金も地位も大いに所有する時です。
願いも大いに叶う非常に良い卦です。ただし、謙虚な気持ちを忘れずに。
(爻辞)
初爻 无交害。匪咎。艱則无咎。(がいにまじわるなし。とがにあらず。なやめばすなわちとがなし。)
大有の初めなのでまだ認められるに至ってないので、問題はない。ゆくゆく驕るようなことがないように
気を付けること。
二爻 大車以載。有攸往。无咎。(たいしゃもってのす。ゆくところありとがなし。)
実力があるので、大任を果たすことができる。良い時です。
三爻 公用亨于天子。小人弗克。(こうもっててんしにきょうす。しょうじんあたわず。)
上から認められる。公私混同せず、奉仕すること。
四爻 匪其彭。无咎。(そのほうたるにあらず。とがなし。)
実力があり、勢いが盛んである。謙虚に仕えていれば問題はない。
五爻 厥孚交如威如。吉。(そのまことこうじょいじょたり。きち。)
真心で上下と親しく接し、しかも威厳があるので吉。有能な部下を用いて成功する。良い時です。
上爻 自天祐之。吉无不利。(てんよりこれをたすく。きちにしてよろしからざるなし。)
運気盛んで極めて順調。謙虚な態度で行うので、天の助けがある。大変良い時です。
(卦辞)謙。亨。君子有終吉。(けんはとおる。くんしおわりありきち。)
地山謙は、下卦が山(艮)、上卦が地(坤)の組み合わせです。地の下に山があり、 そびえ立つ山が
地より姿勢を低くしてへりくだった謙譲の姿象を表しているので、人々も従い上手くゆく。高い山の土砂を
用いて低い地を埋めること、言い換えれば、自分の持っているものを独り占めにしないで、 人に分かち与える
ことが大切です。また、ひとつの陽爻(3爻の股に相当するところ)が5つの陰爻に囲まれているので、
男子裸身の卦といわれ、女性問題には注意すること。
(爻辞)
初爻 謙謙。君子用渉大川吉。(けんけん。くんしもってたいせんをわたるにきち。)
謙虚に努めていれば上手く行く。良い時です。
二爻 鳴謙。貞吉。(めいけんていきち。)
謙遜の名声が鳴り響いている。上の人の引き立てがある。良い時です。
三爻 労謙。君子有終吉。(ろうけん。くんしおわりありきち。)
功労があり、謙遜しているので、最後には苦労が報われる。一方、この爻は、まさに男子裸身の象を表わし、
男性(1陽爻)が女性(5陰爻)に囲まれています。三爻は人体では股の所で、女性関係にはよくよく注意。
四爻 无不利。撝謙。(よろしからざるなし。けんをふるえ。)
実力があまりないのに地位が高い。謙虚の美徳を大いに発揮して、賢者の意見に従えばよい。
五爻 不富。以其鄰。利用侵伐。无不利。
(とまず。そのとなりをもちう。もってしんばつするによろし。よろしからざるなし。)
謙遜な態度でよく相談して行っているので、部下もよく懐いている。時として、服せざるものは断固とした処置を
とってよい。
上爻 鳴謙。利用行師征邑国。(めいけん。もってしをやりゆうこくをせいするによろし。)
謙遜の名声が鳴り響いているが、内部の対立や妨害には対応しなければいけない。
(卦辞)予。利建侯行師。(よはこうをたてしをやるによろし。)
雷地予は、下卦が地(坤)、上卦が雷(震)の組み合わせです。地の上で春雷が鳴りひびき、春の訪れを
感じさせるような楽しい気分を表します。但し、油断せずに、準備を怠らないことが大切です。
(爻辞)
初爻 鳴予。凶。(めいよ。きょう。)
慢心して本務を怠ってはいけない。他人をあてにしてもだめ。
二爻 介于石。不終日。貞吉。(いしにかいす。ひをおえずていきち。)
誘惑に惑わされず、堅固な意志をもって努力すれば吉。蒋介石総統の名はここから取ったとされる。
三爻 盰予。悔遲有悔。(のぞみをよす。くいることおそければくいあり。)
上のご機嫌ばかり見て努力しないと、後悔することになる。分不相応な望みは持たないこと。
四爻 由予。大有得。勿疑。朋盍簪。(よりてよす。おおいにうるあり。うたがうなかれともあいあつまる。)
徳を慕って皆が集まり大いに喜ぶ。信頼の厚い協力者を得て、大任を任される。大変良い時です。
五爻 貞疾恒不死。(ていしつつねにしせず。)
有力な部下(4爻)に制せられ意のままにならないが、慎んでいれば、難は免れる。
上爻 冥予。成有渝。无咎。(めいよなれどもかわりありとがなし。)
快楽に溺れて身を崩す。心を入れえれば咎はない。
(卦辞)随。元亨利貞。无咎。(ずいはおおいにとおるていによろし。とがなし。)
沢雷随は、下卦が雷(震)、上卦が沢(兌)の組み合わせです。春に生命が芽吹く時を表す雷が、
実りの秋の沢の下に潜んでいる。あまり運の強い時ではないが、臨機応変に、時と人に従って対処すれば良い。
(爻辞)
初爻 官有渝。貞吉。出門交有功。(かんかわるあり。ていきち。もんをいでてまじわればこうあり。)
勤務先が変わっても、貞正にして吉。広く交際していけば良いことがある。良い時です。
二爻 係小子。失丈夫。(しょうしにかかりてじょうぶをうしなう。)
目先の小利にこだわって、大利を失う。
三爻 係丈夫。失小子。隨有求得。利居貞。
(じょうぶにかかりて。しょうしをうしなう。したがいてもとむるあればう。ていにおるによろし。)
小利を捨てて大利を得る。正道を守れば、目上の人に従って利益を得ることができる。
四爻 隨有獲。貞凶。有孚在道以明何咎。(したがいてうるあり。ただしけれどもきょう。まことありみちにありもって
あきらかならばなんのとがあらん。)
社長(五爻)を凌ぐほどの力を持っているので危うい地位にいる。私欲に惑わされずに上に従うこと。
五爻 孚于嘉。吉。(よきにまことあり。きち。)
信頼できる友を得て行えば吉。大変良い時です。
上爻 拘係之。乃從維之。王用亨于西山。
(これをこうけいす。すなわちしたがいてこれをつなぐ。おうもちいてせいざんにきょうす。)
沢雷隋の最上位になり、随うこと窮り、身動きが取れない状態である。墓参りをして気分一新する。
(卦辞)蠱。元亨。利渉大川。先甲三日。後甲三日。
(こはおおいにとおる。たいせんをわたるによろし。こうにさきだつさんじつ、こうにおくるるさんじつ。)
山風蠱は、下卦が風(巽)、上卦が山(艮)の組み合わせです。字の姿は、皿の上に蛆虫が3匹、
山に風が当たっても動かず停滞している。空気が澱んでいる、一刻も早く、腐敗した空気を一掃するのが良い。
(爻辞)
初爻 幹父之蠱。有子考无咎。厲終吉。(ちちのこをかんす。こあればちちとがなし。あやうけれどもついにきち。)
山風蠱の始まりで、今ならまだ救いようがある。父の事業を引き継いで、子がしっかりしていれば、
危ういけれども、最後には成就する。
二爻 幹母之蠱。不可貞。(ははのこをかんす。ていすべからず。)
穏やかに諫めて、受け入れさせるのが良い。急激に改革すると信頼関係に傷がつく。
三爻 幹父之蠱。小有悔、无大咎。(ちちのこをかんす。すこしくくいあり。おおいなるとがなし。)
事業の弊害も進んでいるので、改革を強行する。小さな悔いは残るが辛抱して最後までやり遂げる。
四爻 裕父之蠱。往見吝。(ちちのこをゆたかにす。ゆきてりんをみる。)
優柔不断で柔弱な態度では、弊害を増大してしまう。失敗する。
五爻 幹父之蠱。用誉。(ちちのこをかんす。もちいてほまれあり。)
目下の協力者の助けを借りて事業を再建できる。名声が高まる。山風蠱の中では良い時です。
上爻 不事王侯。高尚其事。(おうこうにつかえず。そのことをこうしょうにす。)
宮仕えを止めて、世間から身を引き、高潔を保つ。
(卦辞)臨。元亨利貞。至于八月有凶。(りんはおおいにとおるていによろし。はちがつにいたりて、きょうあり。)
地沢臨は、下卦が沢(兌)、上卦が地(坤)の組み合わせです。地に水が染込むように互いに希望をもって進む。
「臨む」というのは、上の者から下の者に親しんで向うことを意味する。非常に良い卦であるが、いずれは運が
衰える事を念頭においておくことが大切です。臨機応変の対応が必要。
(爻辞)
初爻 咸臨。貞吉。(みなのぞむ。ていきち。)
互いに感じ合い、協力して進む時です。良い時です。
二爻 咸臨。吉。无不利。(みなのぞむ。きち。よろしからざるなし。)
互いに感じ合って進み。すべて順調に発展する。良い時です。
三爻 甘臨。无攸利。既憂之无咎。(あまくのぞむ。よろしきところなし。すでにこれをうれうればとがなし。)
口先だけで人に臨もうすると失敗する。早く悔い改めれば咎なし。
四爻 至臨。无咎。(いたりてのぞむ。とがなし。)
真心で人に臨む。有能な部下と相談して事に当たると良い。大変良い時です。
五爻 知臨。大君之宜。吉。(しりてのぞむ。たいくんのぎ。きち。)
知恵を用いて人に臨む。実力ある部下に任せて成功する。大変良い時です。
上爻 敦臨。吉。无咎。(のぞむにあつし。きち。とがなし。)
人情厚く人に臨むので良い。後継者が育つ。大変良い時です。
(卦辞)観。盥而不薦。有孚顒若。(かんはてあらいてすすめず、まことありて、ぎょうじゃくたり。)
風地観は、下卦が地(坤)、上卦が風(巽)の組み合わせです。地の上を風が吹きぬけるように四方良く観察し、
自省して厳正にことを行うようにすべきである。 軽々しく行動してはいけない。
学問、趣味、旅行や精神的なことは良い。
(爻辞)
初爻 童観。小人无咎。君子吝。(どうかんす。しょうじんはとがなし。くんしはりん。)
目先のことしか見ない。下位の者なら仕方がない。責任あるものなら困ったものだ。
以下、初六、六二、六三から九五を観るときの様子を表現している。
二爻 闚観。利女貞。(うかがいみる。じょのていによろし。)
視野が狭く大局的に見ることができない。小事は良くても大事を行うのは難しい時です。
三爻 観我生進退。(わがせいをみてしんたいす。)
自分で進退を決めればよい。分相応に努めること。
四爻 観國之光。利用賓于王。(くにのひかりをみる。もちいておうにひんたるによろし。)
国の政情を観察する。広い見識を見込まれ取り立てられる。観光という言葉はここからきたものです。
五爻 観我生。君子无咎。(わがせいをみる。くんしはとがなし。)
自分の施政の結果を顧みる。誠をもって行えば、下からも仰ぎ見られる。
上爻 観其生。君子无咎。(そのせいをみる。くんしはとがなし。)
為政者の地位にはないが、民に仰ぎ見られているから安心でできない。慎んだ生活態度を保つこと。
(卦辞)噬嗑。亨。利用獄。(ぜいごうはとおる。うったえをもちうるによろし。)
火雷噬嗑は、下卦が雷(震)、上卦が火(離)の組み合わせです。上顎(上爻)と下顎(下爻)の間にあるもの
(四爻)を噛み砕くべし。「目には目を、歯に歯を」のように妨害となるものは断固として噛み砕く、
取り除くべき時です。商売に良い。
(爻辞)
初爻 屨校滅趾。无咎。(こうをはきてあしをやぶる。とがなし。)
誤った方向に猛進しようとするので、最初の内に引き留めないといけない。
二爻 噬膚滅鼻。无咎。(はだえをかみてはなをやぶる。とがなし。)
相手はかなり手強く、こちらが多少傷ついてもしっかりと懲らしめる。
三爻 噬腊肉遇毒。小吝。无咎。(せきにくをかみてどくにあう。すこしくりん。とがなし。)
力量不足で、敵の意外な抵抗にあい苦労する。
四爻 噬乾胏得金矢。利艱貞。吉。(かんしをかみてきんしをう。かんていによろし。きち。)
強い抵抗があるが耐えられる。正道を守れば成果を得る。商売に大吉。
五爻 噬乾肉得黄金。貞厲。无咎。(かんにくをかみておうごんをう。ただしけれどもあやうし。とがなし。)
力はやや弱いが、強力な助けを借りて成功する。
上爻 何校滅耳。凶。(こうをにないみみをやぶる。きょう。)
刑罰の卦の最上位にあり、重い罰を受ける。改心すること。
(卦辞)賁。亨。小利有攸往。(ひはとおる。すこしくゆくところあるによろし。)
山火賁は、下卦が火(離)、上卦が山(艮)の組み合わせです。太陽(火)が山の端にに沈む時のはかない
美しさが示されてます。賁は飾るの意味がある。派手にみえても度が過ぎてはいけない。
小さいことは良いが大きなことはもう一つ控えたほうが良い。見かけにとらわれず、内部を充実させること。
(爻辞)
初爻 賁其趾。舎車而徒。(そのあしをかざる。くるまをすててかちす。)
自分の地位をわきまえて、自力で行く。現状を守る。
二爻 賁其須。(そのひげをかざる)
才能がないので目上の人に従うしかない。
三爻 賁如。濡如。永貞吉。(ひじょじゅじょえいていにしてきち)
美しく飾り立てているが、それに溺れることなく進めば良い。
四爻 賁如。皤如。白馬翰如。匪冦婚媾。(ひじょじゅじょはくばかんじょ。あだするにあらずこんこうせんとす。)
質素で慎ましやかな者の応援がある。控えめに対応すること。良い時です。
五爻 賁于丘園。束帛戔戔。吝終吉。(きゅうえんをかざる。そくはつせんせんりんなれどもついにきち。)
飾り立てるよりも実質をとれば、大過なきを得る。良い時です。
上爻 白賁。无咎。(しろくかざる。とがなし。)
華美をなくし、質素にして本来の自分に還る。精神的充実がある。
(卦辞)剝。不利有攸往。(はくはゆくところあるによろしからず。)
山地剥は、下卦が地(坤)、上卦が山(艮)の組み合わせです。山際が崩れて、地が剥がれて非常に危険な状態
です。自分の足元の生活基盤が失われるリスクに曝されています。厳しい卦です。
(爻辞)
初爻 剝牀以足。蔑貞凶。(しょうをおとすにあしをもってす。ていをほろぼせばきょう。)
足元から崩れ始めている。目下の裏切りに注意する。
二爻 剝牀以弁。蔑貞凶。(しょうをおとすにべんをもってす。ていをほろぼせばきょう)
危機が迫っている。速やかに内部を固めて守ること。
三爻 剝之无咎。(これをはくすとがなし。)
悪い仲間と手を切って、仲間外れになっても正道を守れば咎なし。
四爻 剝牀以膚。凶。(しょうをおとすにはだえをもってす。きょう。)
危険がいよいよわが身に迫っている。直ちに逃げるべし。
五爻 貫魚。以宮人寵。无不利。(うおをつらぬく。きゅうじんのちょうをもってす。よろしからざるなし。)
柔順さを上司に認められて善処するので、悪くはない。色難に注意。
上爻 碩果不食。君子得輿。小人剝廬。(せきかくらわれず。くんしよをえ。しょうじんろをおとす。)
剥の時が終わろうとしているが、崩れ去って成果が得られない。今は、落ち着いて再起を期すこと。
(卦辞)復。亨。出入无疾。朋来无咎。反復其道。七日来復。利有攸往。
(ふくはとおる。しゅつにゅうやまいなく、ともきたるにとがなし。はんぷくのそのみちひちじつ
にしてらいふくす。ゆくところあるによろし。)
地雷復は、下卦が雷(震)、上卦が地(坤)の組み合わせです。地に雷が戻ってきて今まで停滞気味だった
運気が良くなっていく兆しが見られます。永かった冬が去り、春が戻ってきたところです。これから順々に
進んでいけば運が開けていく。友の助けがある。各爻は帰り方を示しています。
(爻辞)
初爻 不遠復。无祗悔。元吉。(とおからずしてかえる。くいにいたるなし。おおいにきち。
過ちを改めれば遠からず復帰して成功する。徐々に進むこと。良い時です。
二爻 休復。吉。(よくかえる。きち。)
身近な友と相談して進めば成功する。良い時です。
三爻 頻復。厲无咎。(しきりにかえる。あやふけれどもとがなし。)
失敗を繰り返しては、又本来の道に帰る。よく考えてから行動すること。
四爻 中行独復。(ちゅうこうひとりかえる。)
悪い仲間と別れて、独りでわが道に立ち帰る。運気はまだ弱い。
五爻 敦復。无悔。(かえるにあつし。くいなし。)
真心をもって自ら帰る。良い時です。
上爻 迷復。凶。有災眚。用行師終有大敗。以其國君凶。至于十年不克征。
(かえるにまよう。きょう。さいせいあり。もってしをやればついにたいはいあり。
そのこっくんをもってするもきょう。じゅうねんにいたるもせいするあたわず。)
過ちを改めず、正道に戻らないようでは、いつまで経っても成果は上がらない。大きなダメージを受ける。
(卦辞)无妄。元亨利貞。其匪正有眚。不利有攸往。
(むもうはおおいにとおるていによろし。それせいにあらざればわざわいあり。
ゆくところあるによろしからず。)
天雷无妄は、下卦が雷(震)、上卦が天(乾)の組合わせです。雷が天の下にあり、
どちらも行動的であるが、天雷无妄の時は、天の意志に従って行動するのが良い。
万事自然の成り行きに任せて無心に取り組むことが大切です。妄(みだ)りに進まないこと。
(爻辞)
初爻 无妄往吉。(むもうゆけばきち)。
私心を持たず、小細工しないで真心を持って進めば良い。
二爻 不耕穫。不葘畬。則利有攸往。
(たがやさずしてかり。あらきばりせずしてあらたつくる。すなわちゆくところあるによろし。)
欲を持たず、自然のままに行えば良いことがある。新たなことはしない方が良い。
三爻 无妄之災。或繋之牛。行人之得。邑人之災。(むもうのわざわい。あるいはこれにうしをつなぐ。
こうじんのうるは。ゆうじんのわざわ い。)
あらぬ疑いを受けて、災難を被る。何事も拘(かか)わらないこと。
四爻 可貞。无咎。(ていにすべし。とがなし)。
何事も望まず、現状維持に徹する。進んではいけない。
五爻 无妄之疾。勿薬有喜。(むもうのやまい。くすりなくしてよろこびあり。)
意外な災難を被るが、放っておけば、自然に問題が解決する。天雷无妄の中では良い時です。
上爻 无妄行有眚。无攸利。(むもうゆけばわざわいあり。よろしきところなし)。
これ以上進んではいけない。災いを被る。
(卦辞)大畜。利貞。不家食吉。利渉大川。
(たいちくはていによろし。かしょくせずきち。たいせんをわたるによろし。)
山天大蓄は、下卦が天(乾)、上卦が山(艮)の組み合わせです。山の下に天があり、
十分な蓄えができたということを示している。家の中にいるのではなく、時期をみて
世の中にでて力を試せば成功する。
(爻辞)
初爻 有厲利已。(あやうきありやむによろし)
進めば災いにあうので、行かない方が良い。
二爻 輿説輹。(よふくをとく。)
止まって動かないのが良い。
三爻 良馬遂。利艱貞。日閑輿衛、利有攸往。
(りょうばおう。かんていによろし。ひびによえいをならえばゆくところあるによろし。)
実力はあるが、さらに守りを固めて進めば成功する。良い時です。
四爻 童牛之牿。元吉。(どうぎゅうのこく。げんきち。)
事の初めにリスクを未然に防げば、スムーズに進む。大変良い時です。
五爻 獖豕之牙。吉。(ふんしのがきち。)
大きな力を用いずとも猛進を止め、首尾よく事が運ぶ。大変良い時です。
上爻 何天之衢。亨。(なんぞてんのくなる。とおる。)
今まで蓄積してきたものをいかんなく発揮して願いが叶う。妨げるものは何もない。大変良い時です。
(卦辞)頤。貞吉。観頤自求口実。(いはていきち。いをみてみずからこうじつをもとむ。)
山雷頤は、下卦が雷(震)、上卦が山(艮)の組み合わせです。頤はあごを表す。ものを食べる時、
下あごを動かすが、上あごはほとんど動かない。下卦の雷が動き、上卦の山は動かないのと対応する。
正しい方法で自ら食べ物を得る。口に関することから、発言に気を付けないといけない。飲食に関することは良い。
(爻辞)
初爻 舎爾靈龜、觀我朶頤。凶。(なんじのれいきをすてて。われをみておとがいをたる。きょう。)
才能があるのに、他人の富を羨んで働こうとしないようでは頼むに足らない。
二爻 顛頤。拂経。于丘頤。征凶。
(さかしまにやしなう。つねにもとる。きゅうにおいてやしなわる。ゆけばきょう。)
目下のものに養ってもらうのは常道に反する。目上には助けてくれる者が誰もいない。自立すること。
三爻 拂頤、貞凶。十年勿用。无攸利。
(やしないにもとる。ただしけれどもきょう。じゅうねんもちうるなかれ。よろしきところなし。)
人に養ってもらっているのに、不平不満を言うようでは凶。恩に報いること。
四爻 顛頤。吉。虎視々眈。其欲々。无咎。
(さかしまにやしなう。きち。こしたんたんよのよくちくちくたればとがなし。)
根気よく、油断のない心構えをもって進めば、徐々に希望が叶う。人材を用いること。良い時です。
五爻 拂経。居貞吉。不可渉大川。(つねにもとる。ていにおればきち。たいせんをわたるべからず。)
人を養う力がないので、地位はないが実力のあるものに任せる。自ら大事を行ってはいけない。
上爻 由頤。厲吉。利渉大川。(よりてやしなう。あやうけれどもきち。たいせんをわたるによろし。)
人に代わって大任を引き受ける。責任は重いが重圧に負けずに、慎んで応えれば喜びが得られる。大変良い時です。
(卦辞)大過。棟撓。利有攸往。亨。(たいかはむなぎたわむ。ゆくところあるによろし。とおる。)
沢風大過は、下卦が風(巽)、上卦が沢(兌)の組み合わせです。風(木)が沢(水)に沈んでいる。
大過は、陽が強すぎて家の棟木が撓むほど重責を負っている状態で危うい。一方で、この重責を果たしていく
ことで成長していくことにもなる。ここは頑張りどころです。
(爻辞)
初爻 藉用白茅。无咎。(しくにはくぼうをもちう。とがなし。)
行き過ぎるぐらい、恐れ慎んで行えば問題はない。
二爻 枯楊生稊。老夫得其女妻。无不利。(こようていをしょうず。ろうふそのじょさいをう。よろしからざるなし。)
老人が若い妻を娶って元気を取り戻す。目下のものの助けを借りて挽回する時。
三爻 棟橈。凶。(むなぎたわむ。きょう。)
荷が重いのに、自信過剰で強引に進んだ結果、倒れる危機に瀕している。助けも得られない。
四爻 棟隆。吉。有它吝。(むなぎたかし。きち。だあればりん。)
重責に耐えうる。誘惑に乗らずに我が道を進みましょう。沢風大過の中では良い時です。
五爻 枯楊生華。老婦得其士夫。无咎无誉。
(こようはなをしょうず。ろうふそのしふをう。とがもなくほまれもなし。)
一時華やかに見えてもすぐに衰える。褒められたものでもない。
上爻 過渉滅頂。凶。无咎。(すぎてわたるいただきをめっす。きょう。とがなし。)
力もないのに飛び込んで、溺れてしまうような時です。軽率な行動をとらず退くことです。
(卦辞)習坎。有孚。維心亨。行有尚。(しゅうかんはまことあり。これこころとおる。ゆきてたっとばるるあり。)
坎為水は、下卦、上卦ともに水(坎)の組み合わせです。坎は水、陥るを意味し、坎が重なり習坎となる。
どん底で非常に困難な卦。しかし、この状態を受け止めて、真面目に我慢強く努力していくことが大切です。
三大難卦の一つ。
(爻辞)
初爻 習坎入于坎窞。凶。(しゅうかんかんたんにいる。きょう。)
穴の底に落ちて助かるすべがない。無暗に動かず静かに時が来るのを待つしかない。
二爻 坎有險。求小得。(あなにけんあり。もとめてすこしくう。)
穴に落ちて抜け出せない。努力すれば小さなことなら叶うことがある。坎為水の中では良い時です。
三爻 來之坎坎。險且枕。入于坎窞。勿用。
(きたるもゆくもかんかん。けんにしてかつよる。かんたんにいる。もちうるなかれ。)
もっと深い穴に落ち込んだ。進退に窮す。我慢して待つしかない。
四爻 樽酒簋貳用缶。納約自牖。終无咎。
(そんしゅき、じふをもちう。やくをいるるにまどよりす。ついにとがなし。)
質素な酒食でもって裏から心を通じ、打開の道が見え始める。友の助けがある。
五爻 坎不盈。祇既平、无咎。(かんみたず。すでにたいらかなるにいたる。とがなし。)
水が満ちてきて平らになり溢れる寸前である。困難はもう少しで解消されるだろう。
上爻 係用徽纒。寘于叢棘。三歳不得。凶。(つなぐにきぼくをもちう。そうきょくにおく。さんさいえず。きょう。)
艱難の極にいる。道をはずしてきたので、いつまでも困難から抜け出せない。凶。
(卦辞)離。利貞。亨。畜牝牛吉。(りはていによろし。とおる。ひんぎゅうをやしなえばきち。)
離為火は、下卦、上卦ともに火(離)の組み合わせです。火が重なり、輝ける太陽、燃えるような炎に象徴
される卦です。火は内は空虚で、外は明るい。そして、何かにつくことによって生じる。
従って、正しいものにつかなければいけない。相手を間違ってはいけない。扱いを誤って、大火事になる
ようなことのないように、謙虚な気持ちをもって慎重に、正しく進むことが大切。
(爻辞)
初爻 履錯然。敬之无咎。(ふむことさくぜんたり。これをけいすればとがなし。)
最初は見通しが悪いので、軽々しく進んではいけない。慎重に行うこと。
二爻 黄離元吉。(こうりげんきち。)
知恵があり人格者で、実力を発揮する。金運にも恵まれる。 大変良い時です。
三爻 日昃之離。不鼓缶而歌。則大耋之嗟。凶。
(ひかたむくのり。ふをうちてうたわず。すなわちたいてつのなげきあり。きょう。)
見切りを付けるべき時です。のけ者にされぬよう、嘆かずにその時を楽しむ心境になればよい。
四爻 突如其來如。焚如。死如。棄如。(とつじょそれらいじょ。ふんじょしじょきじょ。)
我を張って強引に進めば、災いを被る。守りに徹すること。火事、色難に注意。
五爻 出涕沱若。戚嗟若。吉。(なみだをいだしてだじゃく。いたみてさじゃく。きち。)
不安定な立場にいるが、姿勢を低くして対処すれば地位を保てる。目上の人の助けをえること。
上爻 王用出征。有嘉折首。獲匪其醜、无咎。
(おうもちいいでてせいす。こうべをくじくをよみするあり。うることそのたぐいにあらず。とがなし。)
離為火の最後に至り、先頭に立って戦ってよい。勝利を収めた後は、寛大な処置を行う。良い時です。
(卦辞)
咸。亨。利貞。取女吉。(かんはとおる。ていによろし。じょをとるにきち。)
沢山咸は、下卦が山(艮)、上卦が沢(兌)の組み合わせです。山は若い男を表し、沢は若い女を示し、互いに通じ合う掛で、恋愛の卦ともいわれる。結婚には良い。ただし、真面目に取り組むことが大切です。咸は、感の心がない、すなわち無心であることをいう。沢の水が山にしみ込むように、自分を空しくして、私心なく無心で、人をよく受け入れることが大切。
(爻辞)
初爻 咸其拇。(そのぼにかんず。)
心が動くが、まだ進んではいけない。
二爻 咸其腓。凶。居吉。(そのひにかんず。きょう。おればきち。)
気持ちが動いても、進んではいけない。静かに止まっていれば大丈夫。
三爻 咸其股。執其随。往吝。(そのこにかんず。そのしたがうをとる。ゆけばりん。)
人につられて動くと良くない。自主性のない行動は慎むこと。
四爻 貞吉。悔亡。憧憧往来。朋従朕爾思。
(ていきち。くいほろぶ。しょうしょうとしておうらいすれば、ともなんじのおもいにしたがう。)
私心なく公正であればよいが、欲のままに心が動けば失敗する。
五爻 咸其脢。无悔。(そのばいにかんず。くいなし)
他人に心動かされないのでまずは無事であるが、その志が低く大事はなせない。
上爻 咸其輔頬舌。(そのほきょうぜつにかんず。)
言動に慎しみ、他人の上手い話にも注意すること。
(卦辞)恒。亨。无咎。利貞。利有攸往。
(こうはとおる。とがなし。ていによろし。ゆくところあるによろし。)
雷風恒は、下卦が風(巽)上卦が雷(震)の組み合わせです。「恒」は恒常の恒で変わらないことを
示します。風は長女、雷は長男でを象徴し、長年連れ添った夫婦のように変わることなく暮らして
いくのが良い。夫婦の卦ともいわれる。これまでの方針どおりに進めば良い。
(爻辞)
初爻 浚恒。貞凶。无攸利。(ふかくつねにす。ただしけれどもきょう。よろしきところなし。)
初めから相手に求めすぎれは失敗する。自分の力量をわきまえて、漸進すべし。
二爻 悔亡。(くいほろぶ。)
これまでの方針どおり進めば良い。
三爻 不恒其徳。或承之羞。貞吝。
(そのとくをつねにせず。あるいはこれにはぢをすすむ。ただしけれどもりん。)
本来の居場所におれず、ふらふらと方針を変えるようでは上手くいかない。
四爻 田无禽。(かりにきんなし。)
いつまで経っても獲物が得られない。方針を変更するか退く時。
五爻 恒其徳。貞。婦人吉。夫子凶。(そのとくをつねにす。ただし。ふじんはきち。ふしはきょう。)
いつまでも柔順の徳を守るのはいいが、立場や時に応じて臨機応変に対処することが大切。
女子にはよいが、男子にはよくないともいえる。
上爻 振恒。凶。(こうをふるう。きょう。)
雷風恒の終りで、動揺して安定せず目移りするので、忙しく奔走しても成果が上がらない。
(卦辞)遯。亨。小利貞。(とんはとおる。しょうはていによろし。)
天山遯は、下卦が山(艮)上卦が天(乾)の組合わせです。天(君子)が山に逃れる。天山遯は、
運は衰退の傾向にあり、いったん、物事の中心から逃れるべきである。逃れ方にもいろいろあり、
爻に示される。上爻が一番良く、豊かに逃げる、五爻が嘉く遯る(のがる)で良い。
(爻辞)
初爻 遯尾厲。勿用有攸往。(とんびあやうし。ゆくところあるにもちうるなかれ)
逃げ遅れてしまったので、じっと止まって時を待つしかない。
二爻 執之用黄牛之革。莫之勝説。
(これをとらうるにこうぎゅうのかわをもちう。これをあげてとくなし。)
逃げそこなって脱出できない。速やかに身を引く。
三爻 係遯。有疾厲。畜臣妾吉。
(とんをつなぐ。やまいありてあやうし。しんしょうをやしなえばきち。)
逃げるべき時に、私情にとらわれ、進退できない。大事は行えない。
四爻 好遯。君子吉。小人否。(このめどものがる。くんしはきち。しょうじんはひ。)
誘惑に負けず、速やかに身を引くこと。
五爻 嘉遯。貞吉。(よくのがる。ていきち。)
時の情勢に対応して、上手く逃れることができる。良い時です。
上爻 肥遯。无不利。(ゆたかにのがる。よろしからざるなし。)
悠々と引退することができる。功成り名遂げたといったところです。大変良い時です。
(卦辞)大壮。利貞。(たいそうは。ていによろし。)
雷天大壮は、下卦が天(乾)、上卦が雷(震)の組み合わせです。天の上に雷があり、
共にたいそう勢いのある象であり、少しアクセルを踏みすぎる様子。他を負かすことではなく、
自らに勝つこと、すなわち、自分の勢いを自制できなければならない。
したがって、礼儀正しく行わなければいけない。
(爻辞)
初爻 壯于趾。征凶。有孚。(あしにそうなり。ゆけばきょう。まことあり。)
意欲旺盛であるが、実力不足なので動いてはいけない。
二爻 貞吉。(ていきち。)
盲進せず自分のペースを守れば吉。良い時です。
三爻 小人用壯。君子用罔。貞厲。羝羊觸藩贏其角。
(しょうじんそうをもちい。くんしぼうをもちう。ただしけれどもあやうし。
ていようはんにふれてそのかくにくるしむ。)
自ら墓穴を掘る。何事も一歩遅れて進むのがよい。
四爻 貞吉。悔亡。藩決不贏。壮于大輿之輹。
(ていきち。くいほろぶ。はんひらけてくるしまず。たいよのふくにそうなり。)
道が開けて前進する。◎大変良い時です。
五爻 喪羊于易。无悔。(ひつじをえきにうしなう。くいなし。)
穏やかに柔軟に対応すれば、安寧でいられる。
上爻 羝羊觸藩。不能退。不能遂。无攸利。艱則吉。(ていようはんにふれてしりぞくあたわずすすむ
あたわず。よろしきところなし。なやめばすなわちきち。)
進むに進めず困難を窮める。反省して耐えれば難を逃れる。
(卦辞)晋。康侯用錫馬藩庶。晝日三接。
(しんはこうこうもちいてうまをたまうはんしょ。ちゅうじつみたびせっす。)
火地晋は、下卦が地(坤)、上卦が火(離)の組み合わせです。太陽(火)が地上に出る姿が晋であ
る。この時、太陽が地上を隅々まで照らす。自らの徳と才能を発揮し、勢いよく出世階段を昇り進む
運気が最も盛んな時を示します。大変良い卦です。
(爻辞)
初爻 晋如。摧如。貞吉。罔孚。裕无咎。
(しんじょ。さいじょ。ていきち。まことなし。ゆたかにしてとがなし。)
進もうとしても、まだ力足らず進めない。時機がくるのを待っていればよい。良い時です。
二爻 晋如。愁如。貞吉。受茲介福 于其王母。
(しんじょ。しゅうじょ。ていきち。このかいふくをそのおうぼにうく。)
進もうとしても妨害により進めないが、努力を続ければ思いがけない援助が得られる。良い時です。
三爻 衆允。悔亡。(しゅうまことす。くいほろぶ。)
仲間と心を合わせて進むんで、望みを果たす。大変良い時です。
四爻 晋如。鼫鼠。貞厲。(しんじょ。せきそ。ただしけれどもあやうし。)
実力もないのに、不相応な地位にいるので、方針を誤ってしまう。よけいな欲をださないこと。
五爻 悔亡。失得勿恤。往吉。。无不利。
(くいほろぶ。しっとくうれうるなかれ。ゆけばきち。よろしからざるなし。)
目先の損得を気にせずに、思い切って進めば、最後には慶びがある。大変良い時です。
上爻 晋其角。維用伐邑。厲吉。无咎。貞吝。(そのかくにすすむ。これをもちいてゆうをうつ。
あやうけれどもきち。とがなし。ただしけれどもりん。)
火地晋の極みに至り、力を頼んで小さな事には対処できるが、余裕がない。
これ以上進まず、広い心をもって人に接すること。
(卦辞)明夷。利艱貞。(めいいはかんていによろし。)
地火明夷は、下卦が火(離)、上卦が地(坤)の組み合わせです。明は明らか、賢人、
夷は傷つき破れること。賢人が上の愚かな君主に用いられずに、実力を発揮できない時です。
暗く、長い闇の中にいる時です。これに耐えて正しい姿勢を守り、チャンスを待つのが良い。
(爻辞)
初爻 明夷于飛垂其翼。君子于行。三日不食。有攸往。主人有言。(めいいとぶにそのつばさをたる。
くんしゆくにさんじつくらわず。ゆくところあり。しゅじんことあり。)
勢いがなく、何をしても上手くいかない。進まずに、時期を待つべし。
二爻 明夷夷于左股。用拯。馬壯吉。(めいいさこをやぶる。もちいてすくう。うまそうなればきち。)
傷つくが致命的なものではないので、速やかに退去すれば難を逃れる。強力な応援を得れば吉。
三爻 明夷于南狩得其大首。不可疾。貞。
(めいいなんしゅうにおいてそのたいしゅをう。とくすべからず。ただし。)
大事を行って成功するが、急進してはいけない。地火明夷の中では良い時です。
四爻 入于左腹。獲明夷之心。于出門庭。(さふくにいりて。めいいのこころをう。
ゆきてもんていをいづ。)
内部に入り込み、心意の善くないことを知れば、速やかに退いて難を免れる。
五爻 箕子之明夷。利貞。(きしのめいい。ていによろし。)
狂人を装って、耐え忍んで難を免れるが、志は保つ。
上爻 不明晦。初登于天。後入于地。
(あきらかならずしてくらし。はじめてんにのぼりのちにちにいる。)
初めは勢いがあるが、終りは身を滅ぼしてしまう。
(卦辞)家人。利女貞。(かじんはじょのてい(ただしき)によろし。)
風火家人は、下卦が火(離)、上卦が風(巽)の組み合わせです。女が家の内を、男が家の外
を治める、男女がそれぞれの役割を果たせばスムーズに行く。従って、まず女が正しければ、
家中は正しくなり、ひいては家の外も正しくなる。他の事には気を取られることなく
家を守っていくことが大切。家を守る女性や家族の力が得られると上手く進む、良い卦です。
(爻辞)
初爻 閑有家。悔亡。(ゆうかにふせぐ(ふせぎていえをたもつ)。くいほろぶ。)
初心を忘れない内に、過ちを未然に防げば、家庭は上手く行く
二爻 无攸遂。在中饋。貞吉。(とぐるところなし。ちうきにあり。ていきち。)。
事は成就しないが、婦人にとっては家内の仕事をする分には良い。
三爻 家人嗃々。悔厲吉。婦子嬉(嘻)々。終吝。
(かじんかくかく。あやうきをくいればきち。ふしきき。ついにりん。)
家族に厳しすぎても、緩め過ぎてもいけない。一方に偏らないように節度を保つこと。
四爻 富家。大吉。(いえをとます。だいきち。)
大きな利益を得る時。家業に専念すること。
五爻 王假有家。勿恤。吉。(おうゆうかにいたる。うれえるなかれ。きち。)
家庭内は円満に治まり、ひいては仕事も好調な時です。
上爻 有孚。威如。終吉。(まことあり。いじょたれば。ついにきち。)
我が身を省みて自己に厳しくしていれば、家人も見習って家も繁栄する。
(卦辞)睽。小事吉。 (けいはしょうじはきち。)
火沢睽は、下卦が沢(兌)、上卦が火(離)の組み合わせです。下が小女(沢)、上が中女(離)で
背き合っている。家の中に二人の女性が同居しており、睽きあっている。家の中でも外でも揉め事が
多く、何事も順調には進みません。六五が中を得て九二の陽と応じているので、小さな事ならよい。
(爻辞)
初爻 悔亡。喪馬勿遂。自復。見惡人。无咎。
(くいほろぶ。うまをうしなうおうことなかれ。おのずからかえる。あくにんをみて。とがなし。)
馬に逃げられても、放っていれば戻る。苦手な人も避けない方がよい。意外な応援があり、
道が開けることもある。火沢睽の時は、背くと見えて応じ、応じると見えて背くことがある。
二爻 遇主于巷。无咎。(しゅにちまたにあう。とがなし。)
一心に求めれば、意外な解決の道が見つかる。よく相談して行うこと。
三爻 見輿曳。其牛掣。其人天且〓。无初有終。(よのひかるるをみる。そのうしひかれ。そのひと
かみきられかつはなきらる。はじめなくおわりあり。)
初めは誤解されたりして、ひどい目にあうが、最後には良くなる。
四爻 睽狐。遇元夫交孚。厲无咎。
(けいこ。げんぷにあいてこもごもまことす。あやうけれどもとがなし。)
自我が強く孤立しやすい時。自分を抑えて誠実に対応していけば、協力者が得られる。
五爻 悔亡。厥宗噬膚。往何咎。(くいほろぶ。そのそうはだえをかむ。ゆけばなんのとがあらん。)
仲間の協力を得て解決に当たる。慶びがある。
上爻 睽狐。見豕負塗。載鬼一車。先張之弧。後説之弧。匪寇婚媾。往遇雨則吉。
(けいこ。しのとをおうをみる。きをいっしゃにのす。さきにはこれがゆみをはり。のちには
これがゆみをとく。あだするにあらずこんこうせんとす。ゆきてあめにあえばすなはちきち。)
猜疑心に駆られて孤立するが、疑いを捨てて親しくすれば吉。
(卦辞)蹇。利西南。不利東北。利見大人。貞吉。
(けんはせいなんによろし。とうほくによろしからず。たいじんをみるによろし。ていきち。)
水山蹇は、下卦が山(艮)、上卦が水(坎)の組み合わせです。行けば水難に遭い、
退いても険しい山に立ち塞がれる。有識者に相談して時の至る時までひたすら頑張る時。
三大難卦のひとつである。
(爻辞)
初爻 往蹇來譽。(ゆけばなやみきたればほまれあり。)
進めば困窮し、戻れば難を免れる。時の至るのを待つ時。
二爻 王臣蹇々。匪躬之故。(おうしんけんけん。みのこにあらず。)
国のために献身的に私欲を捨てて奉仕する。時が至れば困難を脱する兆しがみえてくる。
三爻 往蹇來反。(ゆけばなやみきたればかえる。)
進めば難儀し、退いて守ればよい。内部を固めて、助けを得る。
四爻 往蹇來連。(ゆけばなやみきたればつらなる。)
進めば困窮する。退いて友人と協力するとい。
五爻 大蹇朋來。(おおいになやみともきたる。)
困難に遇って責任が重いが、知恵ある友の助けにより困難から脱出しつつある。
上爻 往蹇來碩。吉。利見大人。(ゆけばなやみきたればおおいなり。きち。たいじんをみるによろし。)
進めば困窮するが、退いて実力者に従えば、困難を脱する。水山蹇の中では良い。
(卦辞)解。利西南。无所往。其来復吉。有攸往。夙吉。
(かいはせいなんによろし。ゆくところなければ、それきたりかえりてきち。ゆくところあれば、
はやくしてきち。)
雷水解は、下卦が水(坎)、上卦が雷(震)の組み合わせです。雷が動いて、険難から抜け出る、
すなわち、困難な問題が解決し脱出できる。ただし、ぐずぐずしてるとチャンスを逃すので、素早く
対処する必要がある。逆に、これまで順調にきた人には、良いことが解散、解消する卦でもあります。
(爻辞)
初爻 无咎。(とがなし。)
分をわきまえていれば、問題はない。
二爻 田獲三狐。得黄矢。貞吉。(かりにさんこをう。こうしをう。ていきち。)
正しく行い実績をあげる。思いもよらぬ宝を得る。良い時です。
三爻 負且乘。致寇至。貞吝。(おうてかつのるあだのいたるをいたす。ただしけれどもりん。)
身分不相応なことばかりしていると災いを招く。自分の力量をわきまえること。
四爻 解而拇。朋至斯孚。(なんじのおやゆびをとく。ともいたりてこれまことす。)
つまらない者との関係を断ち切り、良友の助けを受けるべし。
五爻 君子維有解。吉。有孚于小人。(くんしこれとくあり。きち。しょうじんにまことあり。)
悪友との交際を思い切って断ち切り、良友と交われば吉。
上爻 公用射隼于高墉之上。獲之无不利。
(こうもちいてはやぶさをこうようのうえにいる。これをえてよろしからざるなし。)
最後の障害を取り除いて、問題が解決する時。良い時です。
(卦辞)損。有孚。元吉。无咎。可貞。利有攸往。曷之用。二簋可用亨。
(そんはまことありげんきち。とがなし。ていすべし。ゆくところあるによろし。
なにおかこれもちいん。にきもちいてきょうすべし。)
山沢損は、下卦が沢(兌)、上卦が山(艮)の組み合わせです。一時的に損をすることがあるが、
正しく行動すれば後で得が得られる。この卦は、下の者が自己を損して上の者に益する事例です。
(爻辞)
初爻 已事遄往。无咎。酌損之。(ことをやめてすみやかにゆく。とがなし。はかりてこれをそんす。)
自分のことはさておいて、他人のために速やかに行う。実態に応じて対応すれば良い。
二爻 利貞。征凶。弗損益之。(ていによろし。ゆけばきょう。そんせずこれをえきす。)
進んで事をおこしてはいけない。自分は損をしないで、見守って他人を益するのがよい。
三爻 三人行則損一人。一人行則得其友。
(さんにんゆけばすなわちいちにんをそんす。いちにんゆけばすなわちそのともをう。)
三人で行うよりも一人で行った方が成功する。目標を一つに絞って行った方がよい。
四爻 損其疾。使遄有喜。尢咎。
(そのやまいをそんす。すみやかならしむればよろこびあり。とがなし。)
病根を速やかに取り除けば喜びがある。年下の友に助けられることがある。良い時です。
五爻 或益之。十朋之龜弗克違。元吉。
(あるいはこれをえきす。じっぽうのきもたがうあたわず。げんきち。)
思いがけない助けがあって、利益を得る時です。大変良い時です。
上爻 弗損益之。无咎。貞吉。利有攸往。得臣无家。
(そんせずこれをえきす。とがなし。ていきち。ゆくところあるによろし。しんをえていえなし。)
自分が損をしないで、他人を益する。誠意をもって行えば、信望を集める。大変良い時です。
(卦辞)益。利有攸往。利渉大川。(えきはゆくとこあるによろし。たいせんをわたるによろし。)
風雷益は、下卦が雷(震)、上卦が風(巽)の組み合わせです。雷が行動を起こし、
風ががこれに従い益を広げる。大変良い卦です。
天地否の上卦の陽爻を損じて下卦に益した形で上のもの(君子)が下のもの(民)に益すとなる。
六二と九五はともに中正で相応じており、往くところあるによろし。上卦の巽は木で下卦の雷は動く、
動く木は舟の象、大川を渡っても良いとなる。「益」は増す、利益が上がること。
「風雷益の時、進んで良い。大川を渡っても良い」。
(爻辞)
初爻 利用為大作。元吉。无咎。(もちいてたいさくをなすによろ し。げんきち。とがなし。)
張り切って大仕事をするのに良い時です。大変良い時です。
二爻 或益之。十朋之龜弗克違。永貞吉。王用享于帝。吉。
(あるいはこれをえきす。じっぽうのきもたがうあたわず。えいていにしてきち。
おうもちいてていにきょうす。きち。)
思いがけない援助が得られ、幸運が舞い込む。私欲にとらわれず、天に感謝する。大変良い時です。
三爻 益之用凶事。无咎。有孚中行。告公用圭。(これをえきするにきょうじをもちう。とがなし。
まことありてちゅうこう。こうにつげけいをもちう。)
突然の災難に備えること。克服して自己を磨けば役立つ時がくる。良い時です。
四爻 中行告公従。利用為依遷国。
(ちゅうこうこうにつげてしたがう。よりてくにをうつすをなすにもちうるによろし。)
目上の意見に従い、大仕事をする。転勤も良い。大変良い時です。
五爻 有孚惠心。勿問元吉。有孚惠我徳。
(まことありけいしん。とうなかれげんきち。まことありてわがとくをめぐむ。)
誠意があり目下を恵む心が深いので、信望を得て大成功する。人と和合すること。大変良い時です。
上爻 莫益之。或撃之。立心勿恒。凶。
(これをえきするなし。あるいはこれをうつ。こころをたつるつねなし。きょう。)
私欲が深く、恨まれて難を被る。凶。
(卦辞)夬。揚于王庭。孚号有厲。告自邑。不利即戒。利有攸往。(かいはおうていにあげまことにしてよば
うあやうきあり。つぐるにゆうよりす。じゅうにつくによろしからず。ゆくところあるによろし。)
沢天夬は、下卦が天(乾)、上卦が沢(兌)の組み合わせです。上爻の陰が他の5つの陽に突き上げ
られそうな状態で、いかにも決壊しそうな危うい卦です。あくまで、抑えて行動するべき時です。
非常に危うい時で厳しい卦です。
(爻辞)
初爻 壯于前趾。往不勝為咎。(あしをすすむるにそうなり。ゆけばかたずとがとなす。)
勝算がない。進んではいけない。
二爻 楊号。莫夜有戎。勿恤。(おそれてよばう。ぼやにつわものありうれうるなかれ。)
警戒を怠らなければ、不慮の災難を避け得る。
三爻 壯于頄。有凶。君子夬夬。独行遇雨。若濡有慍。无咎。(つらほねにそうなり。きょうあり。
くんしかいをさだむ。ひとりゆきてあめにあう。うるうがごとくいかるるあり。とがなし。)
強気に進んでは失敗するので、密かに準備して行うことが大切。
四爻 臀无膚。其行次且。牽羊悔亡。聞言不信。(いさらいにはだえなし。そのゆくじしょたり。
ひつじにひかれくいほろぶ。ことをききてしんぜず。)
決断する勇気もなく、進退窮まる。忠告を聞いて人の後からついていくこと。
五爻 莫陸夬夬。中行无咎。(けんりくかいかい。ちゅうこうとがなし。)
思い切って決行しても咎なし。ただし、用心しなければいけない。
上爻 无号。終有凶。(よばうなし。ついにきょうあり。)
助けもなく、もはや打つ手がない。凶。
(卦辞)姤。女壮。勿用取女。(こうはじょそうなり。じょをとるにもちうるなかれ。)
天風姤は、下卦が風(巽)、上卦が天(乾)の組み合わせです。姤は思いがけなく会うこと。
初爻の陰が他の5つの陽爻に対しており、男を操るようなしたたかな女性が多いので、妻に
迎えてはいけない。天風姤の時は、思いもかけずこのようなやり手の美女と出会ったり、不慮
の事故などに遭うので注意しましょう。ただし、女性にとっては、仕事面で才能を発揮する時です。
(爻辞)
初爻 繋于金柅。貞吉。有攸往。見凶。羸豕孚蹢躅。
(きんぢにつなぐ。ていきち。ゆくところあればきょうをみる。るいしまことにてきしょくす。)
誘惑が多い時だが、進んではいけない。現状維持に努めること。
二爻 包有魚。无咎。不利賓。(つつみにうおあり。とがなし。ひんによろしからず。)
良からぬものが近づいてくるので、注意して対応すること。
三爻 臀无膚。其行次且。厲无大咎。
(いさらいにはだえなし。そのゆくししょたり。あやうけれどもおおいなるとがなし)
思うように進まないないが、かえって大きな咎もない。
四爻 包无魚。起凶。(つつみにうをなし。きょうをおこす。)
自分の望むものが手に入らない。強行しても無駄である。
五爻 以杞包瓜。含章。有隕自天。(きをもってうりをつつむ。しょうをふくむ。てんよりおちるあり。)
内部に注意して、害を外に出さないようにしていれば、思わぬ福が得られる。
上爻 姤其角。吝。无咎。(そのつのにあう。りん。とがなし。)
強気で人と争えば失敗する。何事も関わらない方がよい。
(卦辞)萃。亨。王仮有廟。利見大人。亨。利貞。用大牲吉。利有攸往。
(すいはとおる。おうゆうびょうにいたる。たいじんをみるによろし。とおる。
ていによろし。たいせいをもちいてきち。ゆくところあるによろし。)
沢地萃は、下卦が地(坤)、上卦が沢(兌)の組み合わせです。地上に沢(水)があり、大地に
水が十分潤い、草木が聚(あつ)まるので萃という。したがって、人、物、金が集まり繁盛する
時です。非常に良い卦です。ただし、競争相手や思いがけない不運もありえますので注意が必要。
(爻辞)
初爻 有孚不終。乃乱乃萃。若号一握爲笑。勿恤。往无咎。
(まことありておえず。すなわちみだれすなわちあつまる。もしよばえばいちあくわらいをなさん。
うれうるなかれ。ゆけばとがなし。)
迷いが多い時であるが、目上の意見を聞き、目標を一つに絞ること。
二爻 引吉。无咎。孚乃利用禴。
(ひけばきち。とがなし。まことあればすなわちもちいてやくするによろし。)
仲間も一緒に集まると良い。誠の心で進む時です。良い時です。
三爻 萃如。嗟如。无攸利。往无咎。小吝。
(すいじょ。さじょ。よろしきところなし。ゆけばとがなし。しょうはりん。)
障害が多く苦労するが、行けば何とかなる。
四爻 大吉。无咎。(だいなればきち。とがなし。)
私欲に捉われず、目上と協力すれば吉。大変良い時です。
五爻 萃有位。无咎。匪孚元永貞。悔亡。
(あつめてくらいをたもつ。とがなし。まことにあらざるもげんえいていにしてくいほろぶ。)
人心を集める時であるが、実力が十分とはいえないので、努力を継続すること。
大変良い時です。
上爻 齊咨涕洟。无咎。(ししていい。とがなし。)
行き詰まって孤立無援の時。反省して人が集まるようにすること。
(卦辞)升。元亨。用見大人。勿恤。南征吉。(しょうはおほひにとほる。もちいてたいじんをみる。
うれふるなかれ。なんせいすればきつ。)
地風升は、下卦が風(巽)、上卦が地(坤)の組み合わせです。風は木の実も表し、
これが発芽し、伸びていく。目上の人の指導に従い少しづつ進めば良い。良い卦です。
(爻辞)
初爻 允升。大吉。(まことにのぼる。だいきち。)
目上の人に従って行けば成功する。一歩一歩進む時。大変良い時です。
二爻 孚乃利用禴。无咎。(まことあればすなわちやくをもちいるによろし。とがなし。)
誠意をもって努めれば、後に喜びあり。良い時です。
三爻 升虚邑。(きょゆうのぼる。)
妨げるものなく上り進む。実益はそれほど伴わないかもしれない。良い時です。
四爻 王用亨于岐山。吉无咎。(おうもちいてぎさんにきょうす。きちにしてとがなし。)
自分の分をわきまえ、控え目にして吉。上下和合して安泰。良い時です。
五爻 貞吉。升階。(ていきつ。かいにのぼる。)
階段を上り、目的を達する時。意外の幸運に恵まれる。大変良い時です。
上爻 冥升。利于不息之貞。(めいしょうす。やまざるのていによろし。)
止まることを知らず、行き過ぎて失敗する。
(卦辞)困。亨。貞。大人吉无咎。有言不信。
(こんはとおる。ただし。たいじんはきちにしてとがなし。ことあるもしんじられず。)
沢水困は、下卦が水(坎)、上卦が沢(兌)の組み合わせです。保つべき水が沢(池)の下に
漏れて、池が涸れてしまった非常に困った状態である。三大難卦の一つです。沢水困の時、
これ以上悪くなることはないので、これを受け入れて時の至るのを待つしかない。
(爻辞)
初爻 臀困于株木。入于幽谷。三歳不覿。
(いさらいしゅぼくにくるしむ。ゆうこくにいる。さんさいみず。)
困難のどん底に陥って、しばらく好転しない。時を待つしかない。
二爻 困于酒食。朱紱方來。利用亨祀。征凶。无咎。
(しゅしょくにくるしむ。しゅふつまさにきたる。もちいてきょうしするによろし。
いけばきょう。とがなし。)
困窮の時。進んではいけない。時を待ち堪え忍ぶことです。
三爻 困于石。據于蒺藜。入于其宮。不見其妻。凶。
(いしにくるしむ。しつれいによる。そのきゅうにいりて。そのさいをみず。きょう。)
動けば傷つく。石の上にも三年。我慢すること。
四爻 來徐徐。困于金車。吝有終。
(きたることじょじょ。きんしゃにくるしむ。りんなれどもおわりあり。)
だんだん良くなる。遅くなるが助けが現れるので、焦らないで待つこと。
五爻 劓刖。困于赤紱。乃徐有説。利用祭祀。(はなきりあしきる。せきふつにくるしむ。
すなはちようやくよろこびあり。もちいてさいしするによろし。)
ようやく援助者があらわれる。徐々に光が見えてくる。
上爻 困于葛藟。于臲卼。曰動悔。有悔征吉。
(かつるいにくるしむ。ここにげつごつ。いわくうごけばくいる。くいるあっていけばきち。)
沢水困の時もまもなく終わります。反省して出直す時です。
(卦辞)井。改邑不改井。无喪无得。往来井井。汔至。亦未繘井。羸其瓶。凶。
(せいはゆうをあらためせいをあらためず。うしなうなくうるなし。おうらいせいせい。
ほとんどいたるもまたいまだせいをきっせず。そのつるべをやぶる。 きょう。)
水風井は、下卦が風(巽)、上卦が水(坎)の組み合わせです。古来、井戸は村(為政者)
が変わっても、場所を変えることなく、人々を潤し養ってきた。ただし、水を汲む釣瓶の縄が
切れたり、水を汲むのにちょうど良い長さでなければ用をなさない。井戸のように、本来の
自分の役割をこつこつと地道に繰り返しこなしていく奉仕の精神で進むことが大切。
(爻辞)
初爻 井泥不食。旧井无禽。(せいでいしてくらわれず。きゅうせいにきんなし。)
まだ、人の役に立たない。
二爻 井谷射鮒。甕敝漏。(せいこくふにそそぐ。つるべやぶれてもる。)
骨折り損のくたびれもうけ。時期を待つこと。
三爻 井渫不食。爲我心惻。可用汲。王明並受其福。(せいさらえどもくらわれず。わがこころの
いたみをなす。もちいてくむべし。おうあきらかなればならびにそのさいわいをうく。)
実力、才能があるのに世に認められない。あきらめずに努力すること。
四爻 井甃。无咎。(せいいしだたみす。とがなし。)
内部を整備して、固めておく。
五爻 井洌。寒泉食。(せいいさぎよし。かんせんにしてくらわる。)
世間に認められる。 良い時です。
上爻 井收勿幕。有孚元吉。(せいくみておおうなかれ。まことありげんきち。)
広く信頼を得て、世間の人の役に立ち、多忙の時。大変良い時です。
(卦辞)革。巳日乃孚。元亨利貞。悔亡。
(かくはおわるひにしてすなわちまことす。おおいにとおるていによろし。くいほろぶ。)
沢火革は、下卦が火(離)、上卦が沢(兌)の組み合わせです。古きを去り、新しきを
求めるのが良いが、人と時を得ていなければいけない。
(爻辞)
初爻 鞏用黄牛之革。(かたむるにこうぎゅうのかわをもちう。)
改革するのは時期尚早。まだ動いてはいけない。
二爻 已日乃革之。征吉。无咎。
(おわるひにしてすなはちこれをあらたむ。ゆけばきち。とがなし。)
内密に準備をして、時機が至れば改革する。良い時です。
三爻 征凶。貞厲。革言三就。有孚。
(ゆけばきょう。ただしけれどもあやうし。かくげんみたびなる。まことあり。)
周囲の意見をよく聞き、コンセンサスを得ること。
四爻 悔亡。有孚改命。吉。(くひほろぶ。まことありめいをあらたむ。きち。)
条件が整えば、改革を行って成功する。良い時です。
五爻 大人虎変。未占有孚。(たいじんこへんす。いまだうらなわずしてまことあり。)
自信をもって改革し、成就する。大変良い時です。
上爻 君子豹変。小人革面。征凶。居貞吉。(くんしひょうへんす。
しょうじんめんをあらたむ。ゆけばきょう。ていにおればきち。)
改革の仕上げを入念に行なう時です。これ以上進まないこと。良い時です。
(卦辞)鼎。元吉。亨。(ていはげんきち。とおる。)
火風鼎は、下卦が風(巽)、上卦が火(離)の組み合わせです。鼎は、「かなえ」のことで、
3本足の鍋のような器のこと。協力して支えあい、安定しているので成功する非常に良い卦です。
また、鼎の中に材料をいれ、煮炊きして新たな物を創る、すなわち、改革の仕上げをすることも
含んでいます。
(爻辞)
初爻 鼎顚趾。利出否。得妾以其子。无咎。(ていあしをさかさまにす。あしきをいだすによろし。
しょうをえてそのこをもってす。とがなし。)
新しいものを入れる前に、古い弊害を一掃し、内部を整えること。
二爻 鼎有実。我仇有疾。不我能即。吉。
(ていじつあり。わがあだやまいあり。われにつくあたわず。きち。)
他人に惑わされずに、誠実に行っていれば、良くなっていく。
三爻 鼎耳革。其行塞。雉膏不食。方雨虧悔。終吉。(ていのみみあらたまる。そのこうふさがる。
きじのあぶらくらわれず。まさにあめふらんとしてくいをかく。ついにきち。)
積極的に行き過ぎて失敗する。分を守って目上に従えば好転する。
四爻 鼎折足。覆公餗。其形渥。凶。
(ていあしをおる。こうのそくをくつがえす。そのかたあくたり。きょう。)
重荷に耐えられず失敗する。
五爻 鼎黄耳金鉉。利貞。(ていこうじきんげん。ていによろし。)
目下の意見をよく聞いて正しく行えば、努力が報われる。大変良い時です。
上爻 鼎玉鉉。大吉。无不利。(ていぎょくげん。だいきち。よろしからざるなし。)
有終の美を飾ることができる。大変良い時です。
(卦辞)震。亨。震来虩々。笑言唖唖。震驚百里。不喪七鬯。
(しんはとおる。しんきたるにげきげきたり。しょうげんあくあくたり。しんひゃくりを
おどろかすもひちょうをうしなわず。)
震為雷は、下卦、上卦ともに雷(震)の組み合わせです。雷が鳴り響くほど驚くことがあっても、
身を慎み、過失を改めれば、最終的には笑って治まり何事もない。堅実に計画をたてて事を進める
ことが大切です。
(爻辞)
初爻 震来虩々。後笑言唖々。吉。
(しんきたるにげきげきたり。のちにしょうげんあくあくたり。きち。)
初めは驚くことがあるが、後に安心する。奮起すること。良い時です。
二爻 震来厲。億喪貝。躋于九陵。勿遂。七日得。
(しんきたるあやうし。おくばいをうしなう。きゅうりょうにのぼる。
おうことなかれ。ひちじつにしてう。)
驚くべきことに遇って財を失うが、まもなく戻ってくる。身の安全を第一に考えて対処する時。
三爻 震蘇々。震行无眚」。(しんそそたり。おそれてゆけばわざわいなし。)
慎重に進めば災いは避けられる。気を強く持つこと。
四爻 震遂泥。(うごきてついにおぼる。)
実力不足であるのに動き、中途で挫折を味わう。
五爻 震往来厲。億无喪有事。(しんおうらいあやうし。おくゆうじをうしなうなし。)
危険が一杯。現状維持を守り、有事の備えをすること。
上爻 震索々。視矍々。往凶。震不于其躬。于其鄰。无咎。婚媾有言。
(しんさくさくたり。みるかくかくたり。ゆけばきょう。しんそのみにおいてせず。
そのとなりにおいてす。とがなし。こんこうことあり。)
進んではいけない。他を見て己を反省すれが難を免れる。
(卦辞)艮其背。不獲其身。行其庭。不見其人。无咎。
(そのはいにとどまりてそのみをえず。そのていにゆきてそのひとをみず。とがなし。)
艮為山は、下卦、上卦ともに山(艮)の組み合わせです。山のように止まって頑張るべき時です。
協力者も得られないので、無欲で黙々と努力していれば問題はない。心が止まるべき所に止まって
いれば、身体が動いてもそれにつれて心の動くことはない。ただし、止まるべき時には止まり、
行くべき時には行くように、時機を得ることが大事である。
(爻辞)
初爻 艮其趾。无咎。利永貞。(そのあしにとどまる。とがなし。えいていによろし。)
止まって動かずにいればよい。現状維持に徹する時です。転職は不可。
二爻 艮其腓。不拯其隋。其心不快。
(そのこむらにとどまる。そのしたがうをすくわず。そのこころこころよからず。)
自由が利かない。不満が多い時。
三爻 艮其限。列其夤。厲薰心。
(そのげんにとどまる。そのいんをさく。あやうくしてこころをくんす。)
周囲の人に離反され危うい。柔軟性も必要。
四爻 艮其身。无咎。(そのみにとどまる。とがなし。)
己の分を守り、時運が来るのを待つこと。
五爻 艮其輔。言有序。悔亡。(そのほにとどまる。ことじょあり。くいほろぶ。)
言葉を慎み、失言のないようにすること。
上爻 敦艮。吉。(とどまるにあつし。きち。)
止まるべき所に止まって吉。有終の美を飾る。良い時です。
(卦辞)漸。女帰吉。利貞。(ぜんはぢょとつぐにきち。ていによろし。)
風山漸は、下卦が山(艮)、上卦が風(巽)の組み合わせです。水鳥が水際から徐々に進み、
陸に上がり整然と飛び立っていくまでの物語に例えられています。女嫁ぐに吉。正しい順序に乗っ
とって結婚するのは吉。風は木をも表し、山の上に木が育っている象で好ましい。順序正しく進ん
でいくのが良い、一足飛びはだめ。良い卦です。
(爻辞)
初爻 鴻漸于干。小子厲。有言。无咎。
(こうみぎわにすすむ。しょうしあやうし。ことあり。とがなし。)
慎重に徐々に進む。無理hしない方が良い。
二爻 鴻漸于磐。飲食衎々。吉。(こういわおにすすむ。いんしょくかんかんたり。きち。)
少しずつ進んで、安定を得る。目上の信頼に応えること。良い時です。
三爻 鴻漸于陸。夫征不復。婦孕不育。凶。利禦冠。(こうりくにすすむ。ふゆきてかえらず。
ふはらみていくせず。きょう。あだをふせぐによろし。)
誘惑に負けて失敗する。家庭が不安定で、外敵にも注意。
四爻 鴻漸于木。或得其桷。无咎。(こうきにすすむ。あるいはそのかくbrをう。とがなし。)
まだまだ不安定な時。従順な姿勢で行けばよい。
五爻 鴻漸于陵。婦三歳不孚。終莫之勝。吉。
(こうりょうにすすむ。ふさんさいはらまず。ついにこれにかつことなし。きち。)
根気よく努めれば最後には解決する。良い時です。
上爻 鴻漸于逵。其羽可用為儀。吉。(こうきにすすむ。そのはねもちいてぎとなすべし。きち。)
有終の美を飾る。大変良い時です。
(卦辞)帰妹。往凶。无攸利。 (きまいゆけばきょう。よろしきところなし。)
雷沢帰妹は、下卦が沢(兌)、上卦が雷(震)の組み合わせです。少女が大人の男を
追いかける象。分をわきまえて対処することが肝要です。
(爻辞)
初爻 帰妹以娣。跛能履。征吉。(きまいていをもってす。あしなえよくふむ。ゆけばきち。)
何事も控えめな態度で行うこと。
二爻 眇能視。利幽人之貞。(すがめよくみる。ゆうじんのていによろし。)
相手への不満を我慢して、分を守ること。
三爻 帰妹以須。反帰以娣。(きまいもってまつ。きたりかえってていをもってす。)
欲に駆られて失敗する。
四爻 帰妹愆期。遅帰有時。(きまいきをあやまる。とつぐをまちてときあり。)
遅くなっても、辛抱して時期がくるのを待つこと。
五爻 帝乙帰妹。其君之袂。不如其娣之袂良。月幾望。吉。(ていおつまいをとつぐ。
そのきみのべいは。そのていのべいのよきにしかず。つきぼうにちかし。きち。)
地味な身なりでも内面が磨かれていればよい。良い時です。
上爻 女承筐无実。士〓羊无血。无攸利。
(ぢょきゃうをうけてじつなし。しひつじをさきてちなし。よろしきところなし。)
男女ともに誠意がなく上手く行かない。何の利益もない。
(卦辞)豊。亨。王仮之。勿憂。宜日中。
(ほうはとほる。おうこれにいたる。うれうるなかれ。にっちゅうによろし。)
雷火豊は、下卦が火(離)、上卦が雷(震)の組み合わせです。豊かなことを意味する。
太陽が中天にあり、雷と火が相和して勢いが真っ盛りの時ですが、いずれ陽は沈んでいく
のが自然現象である。今は良いという卦ですが、将来は、危うくなっていくので、
気を付けなければいけない。新規の仕事や長引くことはやめておいた方が無難。
(爻辞)
初爻 遇其配主。雖旬无咎。往有尚。
(そのはいしゅにあう。ひとしといえどもとがなし。ゆきてたっとばるるあり。)
目上や同志と協力して、大事にされる。
二爻 豊其蔀。日中見斗。往得疑疾。有孚発若。吉。(そのほうをおおいにす。
にっちゅうとをみる。ゆきてぎしつをう。まことありてはつじゃくたればきち。)
疑われやすいので下手に動かず、誠意を尽くすこと。
三爻 豊其沛。日中見沫。折其右肱。无咎。
(そのはいをおおいにす。にっちゅうまいをみる。そのゆうこうをおる。とがなし。)
才能が認められず暗い状態。身の安全を図ること。
四爻 豊其蔀。日中見斗。遇其夷主。吉。
(そのほうをおおいにす。にっちゅうとをみる。そのいしゅにあう。きち。)
自信過剰で失敗しやすい。人と協力して行うこと。
五爻 来章有慶誉。吉。(しょうをきたせばけいよあり。きつ。)
部下の協力を得て、名誉を得る。大変良い時です。
上爻 豊其屋。蔀其家。闚其戸。闃其无人。三歳不覿。凶。(そのおくをおおいにす。そのいえ
をおおう。そのこをうかがえばげきとしてそれひとなし。さんさいみず。きょう。)
やりすぎて失敗する。外見はよくても中身が伴わない。
(卦辞)旅。小亨。旅貞吉。(りょはすこしくとおる。りょはていにしてきち。)
火山旅は、上卦が火(離)と下卦が山(艮)の組み合わせです。明察(明るい)と
慎重(動かない)。山焼きをしている形。次から次へと燃え移り、落ち着かない様子を
表す。旅に出るということは、現状では優遇されず、逃げ出したくなるような状態でも。
あるさらに旅先では孤独、不安定である。そういう時でも正道をゆけば少しく亨るという
ことである。自分を成長させるための旅や学問には良い時です。
(爻辞)
初爻 旅瑣瑣。斯其所取災。(りょささたり。これそのわざわいをとるところ。)
小利にこだわって、大事を失う。
二爻 旅即次。懐其資。得童僕貞。(りょじにつく。そのしをいだく。どうぼくのていをう。)
資金も入り、召使いも得る。一息付ける時。火山旅の中では良い時です。
三爻 旅焚其次。喪其童僕貞。厲。
(りょそのじをやく。そのどうぼくのていをうしなう。あやうし。)
資金も人も失う。不安定で危うい。
四爻 旅于処。得其資斧。我心不快。
(りょところにおいてす。そのしふをう。わがこころこころよからず。)
いったん落ち着いたように見えるが、内心は気苦労が多い。
五爻 射雉一矢亡。終以譽命。(きじをいていっしうしなう。ついによめいをもってす。)
最初は犠牲を払うが、それ以上の利益を得る。火山旅の中では良い時です。
上爻 鳥焚其巣。旅人先笑後号咷。喪牛于易。凶。(とりそのすをやく。
りょじんさきにわらいのちにはごうとうす。うしをやすきにうしなう。きょう。)
傲慢さや冷酷さが災いして、拠点を失う。凶。
(卦辞)巽。小亨。利有攸往。利見大人。
(そんはすこしくとおる。いくところあるによろし。たいじんをみるによろし。)
巽為風は、下卦、上卦ともに風(巽)の組み合わせです。巽は、風を表し、伏入、
人に従うことを示す。風のように吹き、定住せず、なかなか決断できない時です。
目上の人に相談して従うことが大切です。巽は、二陽一陰の卦で卦の主体は一陰であり、
上の陽爻に従う。そこで、大人(目上の人)に従えば上手くゆく、陰は小だから小し亨る。
従う相手は、小人ではなく、大人でないといけない。また、巽は命令を意味するから、
巽が重なるとは、命令が隅々までいきわたるようにして、実行する。九五は剛中正なので
進めば上手く行く。
(爻辞)
初爻 進退。利武人之貞。(しんたいす。ぶじんのていによろし。)
進退に迷うが、断固たる信念で進めば良い。
二爻 巽在牀下。用史巫粉若。吉无咎。
(そんしょうかにあり。しふをもちいふんじゃくたればきちにしてとがなし。)
情報を整理し、慎重に対処すること。目上の人の意見を聞くとよい。
三爻 頻巽。吝。(しきりにそんす。りん。)
人の顔色を見過ぎて、方針が定まらない。非難される。
四爻 悔亡。田獲三品。(くいほろぶ。かりにさんぴんをう。)
柔順であれば、信頼がされ利益も得る。良い時です。
五爻 貞吉。悔亡。无不利。无初有終。先庚三日。 後庚三日。吉。
(ていきち。くいほろぶ。よろしからざるなし。はじめなくしておわりあり。
こうにさきだつさんじつ。こうにおくるるさんじつ。きち。)
始めは良くないが、終わりには良くなる。事の前後は、丁寧に良く考えて行うこと。
良い時です。
上爻 巽在牀下。喪其資斧。貞凶。
(そんしょうかにあり。そのしふをうしなう。ただしけれどもきょう。)
卑屈過ぎて、財産も地位も失う。凶。
(卦辞)兌。亨。利貞。(だはとおる。ていによろし。)
兌為沢は、下卦、上卦ともに沢(兌)の組み合わせです。兌は喜ぶ、悦ぶと意味していま
す。小女が重なり、おしゃべりの絶えない楽しい様子が想像されますが、口先ばかりで
大きな事業に取り組むには弱い卦です。小さな事ならよい。口は禍いの元なので注意しま
しょう。
(爻辞)
初爻 和兌。吉。(わしてよろこぶ。きち。)
公明正大で、現状を守って吉。良い時です。
二爻 孚兌。吉。悔亡。(まことにしてよろこぶ。きち。くいほろぶ。)
誠実であれば、信頼を得る。良い時です。
三爻 来兌。凶。(きたりてよろこぶ。きょう。)
下心を持って近づく人に注意。自身も言葉に注意すること。凶。
四爻 商兌未寧。介疾有喜。
(よろこびをはかりていまだやすからず。やまいをへだてよろこびあり。)
誘惑に引かれて迷う時。本業に励めば喜びあり。
五爻 孚于剥。有厲。(はくにまことす。あやうきあり。)
詐欺にかかりやすく、間違いの多い時。身を守ること。
上爻 引兌。(ひきてよろこぶ。)
取り巻きに囲まれ、浮かれている。引退には良い時。
(卦辞)渙。亨。王仮有廟。利渉大川。利貞。(かんはとおる。おうゆうびょうにいたる。
たいせんをわたるによろし。ていによろし。)
風水渙は、下卦が水(坎)、上卦が風(巽)の組み合わせです。渙は散らすという意味。
巽の表す春風により、坎の冬、凍結を解くように、今までの停滞した状態から開放される
ことを示し、不運の挽回のチャンスです。逆に、今まで順調にきた場合は、離散、解消の
憂き目を見ます。油断しないことです。
(爻辞)
初爻 用拯。馬壯吉。(もちいてすくう。うまそうなればきち。)
強力な援助者に従えば上手く行く。
二爻 渙奔其机。悔亡。(かんそのきにはしる。くいほろぶ。)
速やかに強力な援助を求めて、基礎を固めること。
三爻 渙其躬。无悔。(そのみをかんす。くいなし。)
利己心を抑えて、全力投球する時。
四爻 渙其群。元吉。渙有丘。匪夷所思。(そのぐんをかんす。げんきち。
かんしてきゅうのごときあり。つねのおもうところにあらず。)
通常のやり方では対応できない。派閥を解散して、大同団結する時。大変良い時です。
五爻 渙汗其大号。渙王居。无咎。
(そのたいごうをかんかんす。おうきょをかんす。とがなし。)
人のために骨を折ることにより、自らも利益を得る。自信をもって進んでいい。
良い時です。
上爻 渙其血。去逖出。无咎。(そのちをかんす。さりとおくにいづ。とがなし。)
面倒な現場から退いて無事を得ること。
(卦辞)節。亨。苦節不可貞。(せつはとおる。くせつていすべからず。)
水沢節は、下卦が沢(兌)、上卦が水(坎)の組み合わせです。節は、節度のこと。
沢は泥地、凹地を表し、その上に水がある。水が多すぎると洪水になるは、足らなければ
草木は枯れてしまうので、ほどほどが良いということです。
(爻辞)
初爻 不出戸庭。无咎。(こていをいでず。とがなし。)
控えめにして、内部を固める時。
二爻 不出門庭。凶。(もんていをいでず。きょう。)
消極的で、チャンスを逃してしまう。判断力、決断力を磨くこと。
三爻 不節若則嗟若。无咎。(せつじゃくならざればすなわちさじゃくたり。とがなし。)
節度を失い失敗する。
四爻 安節。亨。(せつにやすんず。とおる。)
節度を守って安泰を得る時です。良い時です。
五爻 甘節。吉。往有尚。(せつにあまんず。きち。ゆきてたっとばるるあり。)
自然に節度が保てる時。自分も他人も満足する。良い時です。
上爻 苦節貞凶。悔亡。(くせつただしけれどもきょう。くいほろぶ。)
度を過ぎた節度に固執して、行き詰まる。もう少し寛容になること。
(卦辞)中孚。豚魚吉。利渉大川。利貞。
(ちゅうふはとんぎょきち。たいせんをわたるによろし。ていによろし。)
風沢中孚は、下卦が沢(兌)、上卦が風(巽)の組み合わせです。口(沢)と口を向け合
っている象で非常に仲が良い。中孚は「誠実な心」を意味し、親鳥が卵を温める(孵卵)
ようにやさしく誠実に行っていけば成功する。外側は陽爻、内側は陰爻で中は空虚、虚心
ということで中孚、また、二五に陽爻があり実が中側にあるということでも中孚ともいえ
る。上卦の巽は木、下卦は沢(水)を表し、木は舟を意味するので大川を渡ってよいとす
る。
(爻辞)
初爻 虞吉。有它不燕。(はかればきち。だあればやすからず。)
本来業務に専心する時。迷ってはいけない。
二爻 鳴鶴在陰。其子和之。我有好爵。吾興爾靡之。(めいかくいんにあり。
そのここれにわす。われにこうしゃくあり。われなんじとこれをともにせん。)
誠の心を通じ合い、喜びも利益も分かち合うこと。
三爻 得敵。或鼓。或罷。或泣。或歌。(てきをえて。あるいはつつみうち。あるいはやみ。
あるいはなき。あるいはうたう。)
感情に走って、中途半端に終わる。
四爻 月幾望。馬匹亡。无咎。(つきぼうにちかし。うまのひつうしなう。とがなし。)
私情を抑えて公事に尽くす。良い時です。
五爻 有孚攣如。无咎。(まことありれんじょ。とがなし。)
心を一つにして協力し合う。大変良い時です。
上爻 翰音登于天。貞凶。(かんいんてんにのぼる。ただしけれどもきょう。)
分をわきまえずに行動して失敗する。
(卦辞)小過。亨。利貞。可小事。不可大事。飛鳥遺之音。不宣上宣下。大吉。
(しょうかはとおる。ていによろし。しょうじにかなり。だいじにかならず。ひちょう
これがいんをのこす。のぼるによろしからずくだるによろし。だいきち。)
雷山小過は、下卦が山(艮)、上卦が雷(震)の組み合わせです。小さな事は良いが、
大事には良くない。雷の象が上下で背け合っている形です。また、「飛鳥の象」といわれ、
山の上高く飛び去っていく姿で、淋しさ、心細さを連想させる。昇りすぎると良くないの
で、過度なほど遜って、分相応にしておくこと。
(爻辞)
初爻 飛鳥以凶。(ひちょうもってきょう。)
実力もないのに、昇りすぎたために失敗する。
二爻 過其祖。遇其妣。不及其君。遇其臣。无咎。
(そのそをすぎてそのひにあう。そのきみにおよばず。そのしんにあう。とがなし。)
直接その人に会わず、遠慮してその部下に会う。控え目に行動すれば小事はなる。
三爻 弗過防之。從或壯之。凶。
(すぎずしてこれをふせぐ。したがわばあるいはこれにそこなわる。きょう。)
行き過ぎて、災難にあい易い。
四爻 无咎。弗過遇之。往厲必戒。勿用。永貞。(とがなし。すぎずしてこれにあう。
ゆけばあやうしかならずいましめよ。もちうるなかれえいてい。)
進めば災いを蒙る。静かにしていること。
五爻 密雲不雨。自我西郊。公弋取彼在穴。(みつうんあめふらず。わがせいこうよりす。
こうよくしてかのあなにあるをとる。)
何事も上手く行かない。人材を探し求めること。
上爻 弗遇過之。飛鳥離之。凶。是謂災眚。(あわずしてこれにすぐ。
ひちょうこれにかかる。きょう。これをさいせいという。)
やり過ぎて失敗する。凶。
(卦辞)既済。亨。小利貞。初吉。終乱。
(きせいはとおる。しょうはていによろし。はじめはきち。おわりはみだる。)
水火既済は、下卦が火(離)、上卦が水(坎)の組み合わせです。既済は既に済(ととの)
っている(既に功成り、名遂げている)ので、新たな事業などは行わず、現状維持に務め
ると良い。油断していると衰退していく。初め(初爻~三爻)はまあまあ良いが、終わり
に近づくにつれて乱れる。
(爻辞)
初爻 曳其輪。濡其尾。无咎。(そのりんをひく。そのりんをうるおす。とがなし。)
慎重に構え、前進しないこと。
二爻 婦喪其弗。勿遂。七日得。
(ふそのふつをうしなう。おうことなかれ。ひちじつにしてう。)
ゆったりと構えて、事が起こっても放っておくこと。
三爻 高宗伐鬼方。三年克之。小人勿用。(こうそうきほうをうつ。
さんねんにしてこれにかつ。しょうじんはもちうるなかれ。)
冒険したくなるが、やっと勝ってもダメージが大きい。軽々しく動かないこと。
四爻 繻有衣袽。終日戒。(じゅいじょあり。しゅうじついましむ。)
乱れが現れ始める。細心の注意が必要。
五爻 東隣殺牛。不如西隣之禴祭実受其福。(とうりんのうしをころすは。
せいりんのやくさいしてじつにそのふくをうくるにしかず。)
見栄や外聞を捨てて、質素堅実に行うこと。
上爻 濡其首。厲。(そのこうべをうるおす。あやうし。)
水が首まできて溺れそうになっている。いよいよ乱れて危うい。即刻、身を引くこと。
(卦辞)未済。亨。小狐汔済。濡其尾。无攸利。(びせいはとおる。しょうこほとんど
わたらんとしてそのびをうるおす。よろしきところなし。)
火水未済は、下卦が水(坎)、上卦が火(離)の組み合わせです。水火既済とは逆で、
火は上に昇り、水は下に向かうので、相和すことはない。従って、未だ済わず、未完成の
意味。ことを成し遂げるには、周到に計画を立てて、我慢して我慢して努力していく必要
がある。64卦の最後は、新たな出発の卦である。運勢は循環して変化していくことを示し
ている。
(爻辞)
初爻 濡其尾。吝。(そのびをうるおす。りん。)
実力もないのに進もうとして失敗する。
二爻 曳其輪。貞吉。(そのりんをひく。ていきち。)
盲進せず、現状を守ればよい。静かに時を待つ時。
三爻 未済征凶。利渉大川。(びせいゆけばきょう。たいせんをわたるによろし。)
積極的に出ては失敗する。しっかり準備をする時。
四爻 貞吉。悔亡。震用伐鬼方。三年有賞于大国。(ていきち。くいほろぶ。
うごいてもってきほうをうつ。さんねんにしてたいこくにしょうするあり。)
前進する時が来た。時間がかかっても頑張りぬけば良い結果が得られる。
五爻 貞吉。无悔。君子之光。有孚吉。
(ていきち。くいなし。くんしのひかりまことありきち。)
目下の援助が得られる。誠実に行えば万事順調に進み、名誉を得る。良い時です。
上爻 有孚于飲酒。无咎。濡其首。有孚失是。(いんしゅにまことあり。とがなし。
そのこうべをうるおせば。まことあるもぜをうしなう。)
節度を守り、泰然と待てばよい。驕りや気の緩みは失敗を招く。
爻辞は初爻から上爻までの各爻の説明です。
各爻は、時期に応じたアドバイスを爻辞として示しています。
それぞれの卦における始まりから終わりまでの時間経過、変化の過程の物語が述べられています。
初爻から上爻を大学の先生の一生、あるいは人体の部位に例えると以下のようになります。
初爻
大学でいえば助手、教育・研究の円滑に実施する上で、補助を行う。
人体の部位でいえば、一番下にある足に相当する。
二爻
大学でいえば助教、自立して教育・研究できるようになったところ。少し自由度があるところ。
人体の部位でいえば、脛に相当する。
三爻
大学でいえば講師で、准教授に準じる職位だが、任期を限って雇用される場合もあり、上からも成果を求められ下からも追い上げられる不安定な地位。人体の部位でいえば、股に相当する。
四爻
大学でいえば准教授、地位も上がり自立して教育・研究・学生の指導に当たれるようになったが、教授に嫌われたら昇進 が難しい。もう一息で教授に届く地位ですから十分気をつけて行動することが大切です。
人体の部位でいえば、腹に相当する。
五爻
大学でいえば教授、最も実力のある地位です。五爻は、六爻の中で最も勢いのある良い地位です。
人体の部位でいえば、胸に相当する。
上爻
大学でいえば、一旦退官した特任教授や名誉教授に当たる、功なり名遂げた地位なので、五爻の教授に煙たがられる存在で、下り坂にさしかかりますのでおとなしくしているのが無難です。
人体の部位でいえば、頭に相当する。
64卦には良い掛けも悪い卦もありますが、悪い卦の場合でも二爻と五爻は、相対的に良いところとされています。
(参考文献)
1.田中恵祥(1995.10.26)、 易経入門、 ダイアモンド社
2.田中恵祥(2008.12.10)、 天地人の極意
3.黄小娥(2004.4.30)、黄小娥の易経入門、 サンマーク出版
4.熊﨑健翁(著)、加藤大学(校訂)(2010.8.8)易占の神秘、紀元書房